日本総研の森陽一氏は「2007年問題の真実とは、基幹業務の大規模開発経験者の引退問題とともに、IT化を企画してきた仕事の分かるシステム要員が引退する点にある」と分析する。(ITセレクト2.0)
オンラインムック「構造改革としての2007年問題」。
「ITセレクト2.0」 2006年1月号 から転載
ものづくり研修の講師への起用も有効な対策方法のひとつ
日本総研の森陽一氏は、将来のITの発展について三つの大きなポイントがあると考える。一つ目は分散したコンピュータ資源の仮想化、二つ目はシステム運用の自動化、自律化だ。これらはコンピュータ技術の高度化よって、社会インフラとしてのITの重要性が拡大することを意味する。
そして三つ目にICチップの日常への浸透を挙げる。運輸業だったJR東日本が、Suicaを浸透させることで、情報サービス産業へと企業ブランドを一気に確立させた。実はその点こそが、ITを使ってどのようなサービスを展開すべきかの企画力が必要とされた例だという。
「2007年問題の真実とは、基幹業務の大規模開発経験者の引退問題とともに、IT化を企画してきた仕事の分かるシステム要員が引退する点にあると考えています」と分析する森氏は、メインフレームを使って、どこをコンピュータ化しようかと考えた人々には、白紙のページに絵を描いてきた企画力があったと強調する。
「COBOLを読める人が少なくなるという問題より、ベテランのプロジェクトマネジャー(PM)が不足するという事態の方がインパクトは大きい」
ITのプロジェクトの成功のカギは、組織力とリーダーシップ、そしてロジスティクスな人間の集団であると同氏は断言する。求められるPM像とは、リーダーシップや人徳でプロジェクトを牽引し、コミュニケーション能力に優れる「棟梁」的なタイプであるという。己の実力をよく理解しており、足りない部分をチーム力で補完することができる。
そのため、PM補佐には、「目利き」(プロジェクトの勘所を押さえ、技術経験を十分に持つ人材)と「PM事務局」(必要な事務作業を行う部署)が必要になる(図4)。
Copyright(C) 2000-2006 Mediaselect Inc. All rights reserved.