企業の日本版SOX法への取り組みは「受け身的な対応が中心」――NRI調査

NRIが実施した日本版SOX法に関するアンケート調査によると、企業の9割近くが日本版SOX法を認識しているが、具体的な作業となるとまだこれからという。

» 2006年02月21日 20時23分 公開
[ITmedia]

 9割近くの企業が日本版SOX法を認識しているが、具体的な作業を開始したのは4分の1以下――野村総合研究所(NRI)が行った日本版SOX法に関するアンケート調査の結果からは、こんな実体が浮かび上がった。

 この調査はNRIが2005年12月に実施したもの。東証一部/二部および東証マザーズ、JASDAQに上場する主要企業を対象とし、380社から回答が得られたという。

 まず日本版SOX法の検討が進められていることを知っているかどうかを尋ねたところ、回答企業の86.1%が認識していた。また、2005年7月に金融庁が公開した公開草案の内容を確認した企業も61.2%に上った。さらに、「何らかの対応を開始している」という企業も63.4%と、比較的高い数値を示した。

 しかし対応の内容を見ると、社外専門家(監査法人やコンサル)に相談した企業が61.9%、責任者/リーダーを任命したというケースが34.7%、プロジェクトを立ち上げたという回答が31.0%。法律そのものが正式に固まっていないという背景はあるにせよ、「具体的な取り組みに入る手前の、いわば準備段階の取り組みが多い」とNRIは評している。

 また、SOX法の認知度や取組状況を見ると、「電力・ガス」「金融」の両業界の意識の高さが目立った。一方、サービス業や商業などでは、他業種に比べ少し取り組みが遅れているという。

 さらに日本版SOX法への対応の「負担」について尋ねたところ、「非常に大きい」が42.6%、「大きい」は37.9%に上った。こうした負担の大きさからか、SOX法対応に際しては「他社と同等のレベルを確保」したいという企業が47.1%、「あまりコストをかけず必要最低限を確保」は36.8%となり、多少コストをかけてでも高いレベルで確保したいという企業は16.1%に過ぎなかった。

 SOX法への対応を進める上で難しいと考えられる事項は「統制の文書化」が最も多く61.3%。ついで「リスクの洗い出し」が33.4%、「対象範囲の決定」が31.8%。さらに「情報システムの改変」が31.3%で続いた。

 NRIでは一連のアンケート結果を踏まえ、「日本版SOX法に対する認識は高いものの、受け身的な対応が中心となっている」と指摘。今後の対応を進める上では、中長期を見据えたERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント)の仕組みを本格的に構築するという全社的な取り組みへのシフトが必要であり、そのためには「リスクの洗い出し」や「リスクの重要性の特定」といった事前の検討が極めて重要になると予測している。

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