共通データベースを基盤に変化する下町――葛飾区激変! 地方自治体の現実(2/2 ページ)

» 2006年04月03日 09時00分 公開
[丸山隆平,ITmedia]
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パッケージシステムにNEC製品を採用

 基幹システムとして日本電気の「住民情報システムCOKAS−X」を採用した。葛飾区の考え方に近い共通データベースが標準装備であったこと、コンセプトの明解さ、標準で区業務の実現範囲が広かったことなどが理由だ。また、システム形態はクライアント・サーバ方式とWeb方式を検討していたが、サーバとクライアントの中間にターミナルサーバを設置し、サーバとターミナルサーバですべての処理を行い、クライアントは画面表示のみを行う「メタフレーム方式」を採用した。

 この方式を採用したのは、ネットワークへの負荷が低いこと、データ通信時の暗号化によるセキュリティが高いことといった理由のほか、運用において外字などの配布を頻繁に行う必要があったため、効率的で安価なクライアント管理手法を模索した結果であるという。

大きいコスト削減効果

 コスト削減のため、導入ではパッケージの特徴を生かすためカスタマイズの上限を10%と定めた。実際のカスタマイズは、データの更新後に確認リストが出力される仕組みであった住民記録システムを、更新前に出力できるようにした部分と、税務システムで帳票類を変更した部分にとどまった。

 また、メタフレーム方式により、クライアント管理費用が圧縮され、さらにクライアント設置台数も削減できた。これらにより、「年間、4億円近い金額が削減できた」(葛飾区政策経営部IT推進課IT調整係長小林孝氏)としている。

 また、区役所窓口での待ち時間も大幅に削減された。例を挙げると、転入届の待ち時間が、平均して23分から18分に、転出・転居届が23分から9分に、といった具合だ。「窓口での処理時間が大幅に短縮されたことにより、繁忙期には、区民が18時ごろまで待たされていたことが解消された」(IT推進課IT調整係主査、曽我義信氏)。この結果、2005年8月からは総合窓口を設け、転入時に必要な複数の届出業務を職員数を増やすことなく1カ所で処理できるようになった。

 東京都23区は、どの区民も均一な住民サービスを受けられることを目的とした財政調整制度がある。いわば、区の力の源泉となる税収を都が管理して各区に配分するものだ。このため、表面的にはどの区民も均一なサービスが受けられることになっている。しかし、これまで見てきたように、IT化の進展度によって住民サービスや行政事務の効率化に差が出てくる。こうした点について小林元係長は「自治体が独自の経営観念を持ち、最小の投資で最大の効果を得る努力を果たしているかが重要となってくる」と語っている。

 今回、住民情報・税情報を中心に構築した共通データベースは、今後、国民健康保険・国民年金・福祉関連システムの情報も統合、保持するだけでなく、内部情報システムなどとの連携を進め、将来的には、電子申請、電子申告、情報提供などに活用できる“電子区役所”の実現を目指している。

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