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» 2006年04月12日 14時07分 UPDATE

激変! 地方自治体の現実:古川康佐賀県知事、「自治体ITのあるべき姿」を語る (1/2)

IT化による新規事業の創出「アジアのハリウッド構想」を自治体ITの目的の1つに掲げる佐賀県の古川康知事。同氏に自治体とITについて、また、自治体におけるCIOのあるべき姿について聞いた。

[丸山隆平,ITmedia]

このコンテンツは、オンライン・ムック「激変! 地方自治体の現実」のコンテンツです。関連する記事はこちらで一覧できます。


 自治体ITの目的は、「業務の効率化」「住民サービスの向上」――にあるが、もう1つ、IT化による新規事業の創出「アジアのハリウッド構想」を掲げているのが、佐賀県の古川康知事だ。古川知事は1958年生まれ。1982年自治省に入省後、沖縄、長野、岡山、長崎など各県での勤務経験を持つ自治体行政のエキスパート。2003年、マニフェストを掲げ佐賀県知事選に挑戦し、全国一の若さで知事に就任したことでも知られる。同氏に、自治体とITについて聞いた。

古川知事 「機械でできることは機械に、職員には議論ができる風土、決定できる風土を」と話す古川知事

ITへの意識改革が重要

ITmedia ITについてどのようなお考えをお持ちですか。

古川 3年前に知事に就任したとき、メールは県庁内で業務のツールとしてほとんど機能していませんでした。職員を見てみると、重要な内容については書類を作成し、対面で上司に判断してもらっていました。しかし、わたしは人に会わなくても済むことがあるはずだと思っていました。

 ITは人に会わなくても用が足せるようにするツールだと考えています。知事就任当時は、県庁のメールがやり取りされるスピードも遅かったですし、PCも全員には行き渡っていませんでした。しかし今、PCは全員に配置し、ホームページの見直しも行うなどし、佐賀県庁のIT化の水準は全国で15番目のところまで高まってきています。わたし自身がIT化に興味を持ち、かつて業務として担当していたこともあるので、仕事のツールとしてITを活用するのは当たり前のこととして取り組んでいます。

 県庁内のPCはセキュリティへの配慮から生体認証と個人IDで保護されていますが、この生体認証の技術は佐賀大学のOBが社長を務めるディー・ディー・エスの技術を使用しています。地元産業の活性化を図るとともに、皆がこうしたことに意識を高めることが大切だと思っています。

CIOはITをキーワードに組織をマネジメントする人

ITmedia 自治体ではCIO(最高情報責任者)の役割が特に重要だと言われていますが、佐賀県ではいかがでしょうか。

古川 今回新しく任命したCIOに「3年以内に佐賀県庁のIT化のレベルを全国トップにしてほしい」と要請しています。CIOはわたしが知事に就任してから外部から招へいしました。CIOの給与も全国でトップレベルにあると思います。また、前任のCIOもアビームからスカウトしました。今回、CIOを公募したところ、全国から116名もの応募がありました。その中から選んだ人は、元は国土交通省の技官で、世界銀行の東京事務所勤務の経験がある人物です。

 佐賀県ではCIOに対してBPR(ビジネス・プロセス・リアンジニアリング)についての権限も与えています。というのも、業務そのものの見直しについてもしっかりとした権限がないと、各本部が言うことを聞かないからです。わたし自身の経験から、権限がないと役人がいかに動かないかを知っていますので、県の組織上でCIOの位置づけをきちんと行っているのです。これは日本型のCIOの理想的な形ではないかと考えています。

 CIOはトップの意向を強く反映して業務を進め、いわば「虎の威」を借りてほしいと言っています。トラではなくタヌキかもしれませんが……。そうすることでCIOも仕事をしやすくなります。その意味では全国自治体のCIOの中で佐賀県のCIOは異質なのではないでしょうか。

 わたしは、CIOは全国の自治体の間で人事交流をすべきで、一カ所にとどまらずほかの自治体にも行き、技術、ノウハウが必要な職場で影響を与えてほしいと思いますし、トップもIT人材に関心を持つべきだと考えています。

 当県のCIOの選考にはわが国を代表する学者、企業のIT関係者に集まっていただき、審査会を組織しましたが、皆から言われたのは「CIOはITの専門家でなくていい。ITについての基本的な理解は必要だが、妙に詳しい人でなく、ITをキーワードに組織のマネジメントをしていく能力があるのかどうかを選考のポイントとすべきである」とアドバイスされました。

 今回CIOに採用した人は自分でもITを仕事で使い、ITに理解があり、かつマネジメント能力が優れている人物です。CIOイコールIT技術者というのでは決してないでしょう。

人間でなければできない仕事がある

ITmedia 地方自治体では現在、財政が厳しい中で住民サービスの向上を進める必要があります。そこにITの出番があると思いますがいかがでしょうか。

古川 IT化は当然、推進した方がいいです。誰がやっても同じことはコンピュータに任せた方がいいに決まっています。わたしはかつて沖縄県の地方課で地方交付税の計算を担当していましたが、業務のほとんどは市町村から上がってきた数字の集計でした。数字を書き移して電卓をたたいた数字を国に送る仕事だったのですが、こんなのは機械の方が得意に決まっています。

 しかし、交付税の算定が実際の行政需要を的確に反映しているのか、または、交付税上は、ここに患者輸送車が1台あるはずだが、本当にあるのか確認するには、実際に出掛けていって目で確認するしかありません。このような人間でなければならない仕事と、機械の方が得意なことをすべて人間が行っていたのです。今、われわれが進めようとしているのは、コンピュータが得意な分野はコンピュータに任せることです。源氏物語の中に「あはれ」という言葉が何回出てくるか、コンピュータなら一瞬だが、昔は学者一生の仕事でした。

 人間でなければならない判断を求められるものに行政をシフトしていく。貴重な人的資源を対人関係や判断に向けていく。それを可能にするのがITです。そうすることで人を別の行政サービスに振り向けられます。たとえばこの8月から佐賀県では旅費の計算をアウトソーシングします。旅費規程を反映したソフトウェアがあれば誰が計算しても同じ結果が出るわけで、外部に出す方が向いているからです。それによって人的資源をたとえば福祉の対人的なことに充てるとか、児童虐待が増えているので、相談などの対人業務に充てることが可能となります。これこそがIT化なのです。

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