Exchangeにはこだわらない――メールアウトソース管理の本気度(2/2 ページ)

» 2006年04月27日 07時00分 公開
[Peter Pawlak,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
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Exchange Hosted Archive
 電子メールおよびインスタントメッセージの保管を求める法令への遵守(コンプライアンス)を支援するサービス。Hosted Continuityサービスによるメッセージの保管期間は30日間だが、Hosted Archiveではさらに長期間メッセージを保管できるうえ、インスタントメッセージやBloombergメールの保管も可能だ。1ユーザー当たりのメッセージデータ保管量は最大3.6Gバイトだが、追加料金を支払うことでこの容量は拡張できる。保管期間が過ぎたメッセージは、自動的に破棄される。Hosted Archiveのユーザーには、自動的にHosted Continuityサービスも提供される。どちらのサービスも、フルテキストインデックス機能を備えており、Webインタフェースから保管されているメッセージを検索できる。(1ユーザーあたり月額17.25ドル)

Exchange Hosted Encryption
 社外とのメールも含めて、ユーザーのデスクトップから直接暗号化された電子メールの送受信を行えるようにする。このサービスは、Voltage Securityが開発したIBE(Identity-Based Encryption)と呼ばれるテクノロジーを使用する。Microsoftは、IBEを利用すれば公開鍵基盤(PKI)およびデジタル証明書を使う必要がなく、代わりに一般的なIDつまり受信者の電子メールアドレスを公開鍵として使用できるとしている。専用のIBE拡張をインストールすると、Outlook、Outlook Express、Outlook Web Access、Hotmail、Yahoo!メールをクライアントに使用してメールを送受信できる。ただし、IBE対応クライアントを利用していないユーザーでも受信した暗号化メッセージを参照できるWebクライアントも用意されている。(1ユーザーあたり月額1.9ドル)

EHSシステムの実装方法

 EHSを導入するに当たり、ユーザー側のサイトで必要になるインフラストラクチャの変更はわずかだ。インターネットDNS(Domain Name Service)レコードを変更して、すべての受信電子メールメッセージを最初にMicrosoft EHSデータセンターに送り、前処理されるようにする。EHSデータセンターは処理を行った後、問題のない正規のメッセージをユーザーのSMTP電子メールサーバに転送する。また、送信メールについてもEHSシステムを経由して送信されるように、ユーザーの電子メールサーバを設定変更しておく。EHSシステムは送信メールを処理して、ポリシーに適合しているメッセージのみを送信先に中継する。Microsoftは米国とヨーロッパで9カ所のデータセンターを運営しており、これらのデータセンターどうしはネットワークでつながれている。いずれのサービスもすべて冗長構成で、負荷分散、フォールトトレランスが実現されている。Microsoftは、99.999%のサービス稼働率を保証しており、実績としては買収前の期間も含めFrontBridgeのサービスがリリースされた1999年以来、100%の稼働率を誇っているという。

MSが狙うターゲットは?

 電子メールの重要性が増すにつれて、MicrosoftのパートナーであるMcAfee、Symantec、トレンドマイクロをはじめとする多くのベンダーが、EHSが提供するサービスの多くを手がけてきている。またMicrosoftは、Exchange向けのアンチウイルスベンダーSybariの買収により獲得した技術を利用して、Exchange自体の機能を強化することで、電子メールのセキュリティを強化してきている。ただし、電子メールシステムのセキュリティの確保や、社内規定および法令遵守に当たるだけの十分なリソースがないか、EHSのようなアウトソースサービスを利用するほうがコスト効率がよいと考えているユーザーは、大規模企業も含めて多い。

 したがって、EHSがMicrosoft以外のテクノロジーをサポートし、"エッジサーバ"として設定されているExchange Server(インターネットとExchangeメールボックスサーバ間を行き来するメッセージを検証するExchangeサーバ)と競合するように思えても、EHSを提供することで得られるメリットの方が損失よりも大きいとMicrosoftは踏んでいる。

 ユーザーはEHSの導入に先立ち、EHSのメリットとITの人的リソースの削減により見込まれるコスト節減と、定期的に発生するEHSサービスのコストを比較する必要があるだろう。EHSの利用料は、結果としては決して安くはない。Hosted Filteringのみでも2年間使用した場合、おおよそExchangeのクライアントアクセスライセンス(CAL)分に相当するだけのコストが発生する。それに加えて、電子メール以外の経路で侵入するウイルスやスパイウェアからデスクトップやサーバを保護するために、他の製品を購入する必要がある。

今後のロードマップ

 EHSはソフトウェア製品ではなくサービスであるため、アップデートを頻繁に実施できる。2006年4月にはバージョン5.3がリリースされ、パフォーマンスの強化、ブロックされたメッセージを参照できる言語数の増加、ユーザーのアカウントおよびセキュリティポリシーを管理するためのツールの機能強化が施されている。

 2006年後半にはさらにいくつかのマイナーアップデート(5.4および5.5)が、2007年始めにはExchange 12のリリースと合わせてEHS 6.0のリリースが計画されている。6.0では、Active Directoryのアドレス帳同期機能のサポートや、Hosted ContinuityおよびHost ArchiveサービスでのOutlookおよびExchangeの連絡先および予定表のサポートなど、Exchange固有のサービスが提供される予定である。また、Webインタフェースおよび管理インタフェースの対応言語も増える見込みだ。

 EHSは現在、北アメリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカで提供されている。2006年後半にはアジア太平洋地域でも、提供が開始される予定だ。

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