「インフラ」「情報」「インタラクション」の保護がミッションSymantec Vision 2006 Report

Symantecの年次カンファレンス「Vision 2006」が開幕。同社会長兼CEOのジョン・トンプソン氏は基調講演の中で今後の戦略を明らかにした。

» 2006年05月09日 10時52分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 米国時間の5月8日、Symantecの年次プライベートカンファレンス「Vision 2006」が開幕した。旧Veritas Software時代より開催されてきたカンファレンスで、Symantecとの統合以来、初の開催となる。

 冒頭の基調講演に登場した同社の会長兼CEO、ジョン・トンプソン氏は「インフラを保護し、あらゆる種類の情報を保護し、インタラクションを保護する」ことが業界全体の責任であると指摘。Symantecはセキュリティとアベイラビリティの双方を提供するベンダーとして、そのような信頼できる環境作りを手助けしていくと述べた。

 組織を守る上では、内外のリスクを理解することが重要になるとトンプソン氏。「自然災害だけでなく、システムの故障や単純なユーザーのミス、事故など原因はいろいろあるが、ひとたびシステムがダウンすれば収入を損なう可能性があるだけでなく、顧客の信頼を失い、評判を落とす可能性がある」(同氏)。そうした影響を被らないためには復旧計画を立案しておくだけでなく、災害や事故が自社を襲う前にテストを行っておくべきだという。

 また、脅威がより高度化していることも問題だと同氏。「世界中に急速に広がるウイルスは過去の脅威となった。これらに代わって、ひそかに感染し、非常にターゲットを絞った脅威が増加している」(トンプソン氏)。

 インフラと情報、インタラクションという3つの要素を保護していくには、外部の脅威に加え、事故などを含めた内部の脅威、両方に対応可能な幅広いソリューションが求められるとした。

メッセージ管理とコンプライアンスにフォーカス

 トンプソン氏はまず、インフラ保護の例として企業のデータセンターを挙げた。ヘテロジニアスな環境の中でシステムは複雑化する一方であり、可視性や効率が損なわれている点が課題だという。このため、管理者の時間やコストの大半は日常的なメンテナンスに費やされ、「CIO Insight Magazineの調査によると、企業のIT予算のうち新しいイノベーションに投じられているのはわずか5%に過ぎない」状況だ。

 この問題の解決に向け、Symantecでは3つのステップでソリューションを提供していくという。

 まず、インフラを「保護」し、アベイラビリティを高めることが第一歩。次にあらゆるプラットフォームを「標準化」していくことにより、ITシステムの生産性向上とコスト削減、ダウンタイムの縮小につなげていくという。最後のステップは、データセンターの「最適化」だ。

 Symantecは、このうち標準化を実現する新製品「Symantec Data Center Foundation」」を、カンファレンスの中で発表する予定だ。NetBackupやCommandCentral、Storage Foundationといった製品群から構成されるもので「こうした製品により、ITは企業のコストセンターではなく、競争力の源になるだろう」(同氏)

トンプソン氏 Symantecの会長兼CEO、ジョン・トンプソン氏

 2つめの要素である情報の保護については、従来から提供してきた「BackupExec」などのデータ保護製品に加え、2006年は「メッセージ管理」と「ITポリシーコンプライアンス」という2つの分野にフォーカスしていく方針だ。

 「メッセージングは企業の中で重要なアプリケーション。この電子メールに加え、IMやVoIPも含めたメッセージング全体をリアルタイムに保護していく」。それも、ただ単に外部の脅威からの保護を図るだけでなく、重要な情報が外部に流出することのないよう、双方向のフィルタリング機能を提供していく計画だ。

 コンプライアンスに関しては、「メールをただアーカイブするだけでなく、優先順位付けと分析を加え、必要に応じて迅速にリトリーブできるようにする」(同氏)仕組みを提供していく。またシステムが、SOX法やHIPPAといった外部の法的規制はもちろん、企業で定めた内部ポリシーに合しているかどうかを検査する仕組みも提供していく。ギャップ分析やドキュメント化などを通じて「コンプライアンスに関する全体的なリスクを削減していく」(トンプソン氏)

 最後のインタラクションに関しては、コンシューマーのオンライン取引に対する信頼が失われていることが問題だと指摘した。この不信感を払拭するため、オンラインの世界で「自分が自分であること」「相手が確かにその相手であること」を確信できるような認証の仕組みが必要だという。

ID管理や暗号化も視野に

 なお同氏は、講演後の質疑応答の中で、Microsofが次期OS「Windows Vista」にさまざまなセキュリティ機能を追加している動きを見せていることに対し、「セキュリティに対する関心を高めることになった。これは、Symantecだけでなく他のセキュリティ企業にとっても大きなチャンスと言える」とコメントしている。さらに、製品のイノベーションの継続とグローバルなブランド力、パートナーシップや販売力によって差別化を図ることは可能とも述べた。

 一方で、アイデンティティ/アクセス管理や暗号化といった、比較的手薄な分野についても、「今後ポートフォリオを強化していく方針」という。有力なテクノロジを持った企業の買収もあり得るというが、パートナーシップの強化や自社開発の強化などという選択肢ももちろんあり、即座に新たな買収につながるものではないと同氏は述べている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ