Linuxカーネルの「オーバーホール」に関するトーバルズ氏のコメント

Linuxカーネル開発者のナンバー2であるアンドリュー・モートン氏が、最新のカーネル・リリースで増えつつあるバグを減らすために、バグフィックスサイクルの必要性を口にしたという。この件についてトーバルズ氏にコンタクトした。

» 2006年05月11日 12時05分 公開
[Joe-Barr,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 LinuxTagに端を発した先週末のニュース記事によると、Linuxカーネル開発者のナンバー2であるアンドリュー・モートン氏が、最新のカーネル・リリースで増えつつあるバグを減らすために、バグフィックスサイクルの必要性を口にしたという。当サイトでは、Linuxプロジェクトのナンバー1であるリーナス・トーバルズ氏にコンタクトした。すると、「バグサイクル」にふさわしいタイミングかもしれないということはトーバルズ氏も認めた。

 この話は、英国ZDNetの記事で先週金曜日に報じられたのが最初で、その後Slalshdotでも取り上げられたことにより、話が大きくなっていた。記事によると、モートン氏は、LinuxTagでの講演で次のように語ったという。「カーネル2.6はだんだんバグが増えてきていると思います。バグを修正するペースより、新たなバグが組み込まれるペースの方が速いように感じられるのです」。さらに、こうも語った。「カーネル開発者は、時間の配分を割り当て直して、バグ修正に当てる時間を増やす必要があります。われわれは、バグフィックスのみのカーネル・サイクルを置く可能性もあります。長期にわたり存在しているバグを修正するためだけのサイクルです」。

 今回の記事では、Linuxカーネルについて指揮監督しているのはモートン氏であるかのような書き方がされており、また、カーネルが現在窮地に陥っているとも報じられた。そこでわれわれは、トーバルズ氏にコンタクトして、それらの点について確認してみた。

 1つ目の点については、トーバルズ氏の返答はこうだった。「アンドリューの称号が『メンテナンスのリーダー』となっていたのは、わたしが加わっているのは当然、と皆が思っているからというだけだと思います。つまり、わたしを除いて考えれば、アンドリューがリーダーだということです。かつてのアランと同じです」。

 また、バグそのものの数と重大性については、トーバルズ氏のコメントはこうだった。

「今回の記事は、いくぶんセンセーショナルな書き方だったと思います(それは納得のいくことです。その方が人目を引く記事になりますから)。とはいえ、懸念があるのはまぎれもない事実です。最近の開発では、息をつく暇が明らかに欠けていました。

結果的には、2.6.16がその『息継ぎ』になる可能性もあります。商用ベンダーの面々が、このカーネルを基盤として使用するものと見込まれ、これを安定させるべく、腰を据えて取り組むはずだからです。

さもなくば、われわれは、『2.6.18には新機能はありません』といった発表をして、皆をある程度落ち着かせることになるかもしれません」

 2.6のバグが、本当にLinuxカーネルの開発ペースによるものならば、以前とは様変わりである。わずか4年前、KernelTrap.orgのインタビューで、モートン氏は次のように語っていたのだ。「わたしは、カーネル開発のペースは非常に遅いと常々感じています。2.4系は2年近くも『機能フリーズ』の状態にあり、現時点でも、ベータの終わりの段階という言い方ができるのです」。

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