Winny経由の漏えいは止まるか? データに見る暴露ウイルスの感染推移(2/2 ページ)

» 2006年05月16日 15時15分 公開
[新井悠,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 同様に、通称「欄検眼段」こと「TROJ_ANTINNY.C」の推移を見てみよう。この暴露ウイルスの発生時期はWORM_ANTINNY.ABとほぼ同じである。グラフ(図2)のように、WORM_ANTINNY.AB同様、下降線を途中まで描いて終息するかに見えたものの、やはり4月に突発的な上昇を示している。

図2 図2●欄検眼段こと「TROJ_ANTINNY.C」の感染状況

 最後に「WORM_ANTINNY.GEN」の感染状況のグラフを紹介したい。筆者が最も驚いたのはこのグラフ(図3)である。約1年間にわたって感染数はほぼ一定の量で推移したのち、一連の暴露ウイルスの被害報道があった期間はまったく検出されない状況となった。ここまでは上記2つのウイルスと同じ傾向である。そして4月になると、それまでの倍の量が検出されるようになった。

図3 図3●「WORM_ANTINNY.GEN」の感染状況

 ある見方をするならば、一連の報道によってウイルスの怖さを感じた人たちがこぞって自分のPCを検査し始めた結果たくさんの暴露ウイルスが検出され、このような結果になった、という推論も成り立つ。しかし、この仮説が本当ならば、報道が盛んに行われていた時期にピークが生じてもいいはずだ。

 ちなみに、ここで紹介したもの以外のAntinnyシリーズの推移を見ても、同じ傾向がみてとれる。なぜだろうか。

 幾つもの推論はできるが、筆者はその中から1つを挙げておきたい。それは、一連のニュースを見て新たにWinnyを使い始めた利用者がおり、彼らが暴露ウイルスに感染し始めているのではないか、ということだ。歴史は繰り返されるのか。

本質的な対策は?

 この1〜2カ月と同様の悲劇を繰り返さないために、最後にもう一度「今すぐできる暴露ウイルス対策」について記しておきたい。つまりは、興味本位でファイル共有ソフトを使用しないことだ。

 情報流出を防ぐには、「情報の管理を徹底する」「ウイルスに感染しない」などいくつかの対策もある。しかし、自分自身や自分の大事な人の将来さえも台無しにするような事態を避ける究極の対策としては、ファイル共有ソフトを使用しないことだといえる。

 加えて、大半のファイル共有ネットワークにおいて権利を侵害するコンテンツが流通してしまっている状況をどのようにして打破していくべきかという点についても議論が必要だろう。なぜならば、先に示したウイルス感染状況のデータは、「権利侵害コンテンツを流通させる行為の一種の『副産物』として再び情報漏えいが起こっている」ことを示すものである、という見方もできるからだ。よって、暴露されてしまった情報の流布を止めることに焦点を当てることもさることながら、今一度、ファイル共有ネットワークがどのように利用されているのかを問うことこそ本質的な解決につながるのではないだろうか。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ