シンクライアント移行/運用時のポイントとはシンクライアントの真価を問う(1/2 ページ)

シンクライアントシステムを導入する際には、どんな注意が必要だろうか。筆者が勤務先でシンクライアントの構成検討/評価を行ってきた経験を元に、導入、運用時の課題を紹介する。

» 2006年06月15日 16時00分 公開
[宮本久仁男,ITmedia]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「シンクライアントの真価を問う」でご覧になれます。



 これまでの記事で、一般的なシンクライアントの仕組みと方式について説明してきた。では、実際に導入する際にはどういった点がポイントとなるのだろうか。

 筆者が勤務先でシンクライアントの構成検討/評価を行ってきた経験を元に、導入や運用時の課題、制限などを紹介していこう。

同期型アプリケーションの検証

 「同期型」というと耳慣れないかもしれないが、要はマルチメディアコンテンツの扱いは要注意ということである。特に、ストリーミング系コンテンツや動きの多いFlashコンテンツの場合、描画の頻度は通常のアプリケーションに比べると格段に多い。その負荷はすべてシンクライアントサーバにかかってくることになる。

 PC単体であれば1つの画面の描画にリソースを注げばよいのだが、シンクライアントシステム、特に画面転送型の場合は、描画する仮想画面の数は接続クライアント数と同じ数に上り、負荷もそれだけ高くなる。

 筆者が行った検証では、Flashのプラグインについても問題が出た。筆者の環境では、シンクライアントサーバに接続したNASにユーザープロファイルを格納している。そこで、アプリケーションが利用するディレクトリもNAS上に置いたところ、Flashプラグインがそれを認識せず、結果としてコンテンツがうまく動作しないことがあった(具体的には、「Google Map」の利用で不具合が出た)。

 アプリケーションが利用するディレクトリをサーバに直接接続されているHDD上に移したところ、不具合は解消した。

周辺機器の利用

 営業報告書の作成などで、PCにプリンタやスキャナといった周辺機器を「直接」接続して使うことも多いだろう。しかしシンクライアントの場合、そのような使い方はできないと考えておくほうが無難だ。もっとも、元々ネットワークプリンタなどを使うようにしている環境ならば、自由度が下がることはないだろう。

「シンクライアントを使わない」という選択肢

 上記とも関連するが、業務上、特別なハードウェアや周辺機器をどうしても利用する必要がある場合、「シンクライアントを使わない」という選択肢も視野に入れるべきだろう。

 全体の業務の中で、周辺機器などの理由が必須となる業務が少ない場合は、シンクライアントを適用可能なポイントと適用すべきでないポイントを洗い出し、使い分けるといった考え方が必要だ。もちろん、シンクライアントを適用可能なポイントについては積極的に置き換えることで、リスクを局所化できる。逆に、適用できないポイントについては、例えばシーピーアイの「TotalSecurityFort」などの端末管理ソフトウェアを用い、ポリシーで制限する必要がある。

冗長化とその限界

 PCをシンクライアントに置き換えた環境では、シンクライアントサーバの停止は、すなわち業務そのものの停止を意味する。

 これを想定して、シンクライアントサーバについてはあらかじめ冗長化構成を取ることが多い。仮に1台のシンクライアントサーバが停止しても、もう1つのサーバが生きていれば、そちらに接続し直すことで業務の継続が可能になるからだ。

 しかしこれにも限界がある。シンクライアントサーバが停止した場合、そこで作業していた内容すべてが救済できるわけではない。停止した時点でメモリ上にしかないデータはそのまま失われてしまう。

 したがって、シンクライアントサーバのプラットフォームとして信頼性が高いハードウェアを採用したり、運用管理を工夫するなどして、可能な範囲で障害予測と予防に努める措置が必要となる。

ソフトウェアライセンスへの留意

 シンクライアント導入に当たっては、サーバ上で動作させるアプリケーションについて、どのようなライセンス体系に従うべきかを確認しておく必要がある。例えば、Microsoft Officeをシンクライアント構成で使う場合には、Microsoft Officeを使う端末(クライアント)ごとにOffice製品のライセンスが必要になる(マイクロソフトの情報参照)

 また、現時点ではシンクライアントサーバ上で動作させることを想定していないアプリケーションも多い。そのようなアプリケーションを使う場合には、ソフトウェアの提供元や代理店をはじめとするサポート元にライセンスを確認する必要がある。

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