Ottawa Linux Symposium2日目:ユーザー空間は最悪、ほかLinuxの最新動向リポート(3/3 ページ)

» 2006年07月27日 10時30分 公開
[David-'cdlu'-Graham,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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デジタルデバイド解消にLinuxを役立てる

 夕方には、デビット・ヘリエ氏のBoFセッションに参加した。同氏は、Australian Commonwealth Scientific and Research Organization(CSIRO)のリサーチエンジニアで、デジタルデバイドの橋渡しを研究テーマとする。このテーマに関する小論で、IBM T60を1日早く手に入れたことがある。

 ヘリエ氏の望みは、世界各地の貧困層に属する数百万の人々に教育の機会を与える活動にLinuxとオープンソースを役立てることだ。アフリカだけでも、4400万の小学生が基礎教育を受けられずにいる。

 参加者からの指摘によると、世界には100万人以上の言語人口を抱える言語が347あり、それよりマイナーな言語に翻訳されたLinuxバージョンがあるとはいえ、それらのすべてに対してソフトウェアが翻訳されているわけではない。別の参加者からは、オペレーティングシステムとアプリケーションの翻訳は、困難のほんの一部でしかないという意見もあった。重要な部分は、それと関連する全般的な知識を翻訳することである。翻訳の対象になるツールがオフラインで使用できることも必要だ。遠隔地の貧弱なコミュニティーが、インターネットにアクセスできる可能性は低い。電気を使えれば運がいい方である。

 Linux開発者は、多くが大企業に雇われている、とヘリエ氏は言う。であるから、率先してこのデジタルデバイドを埋めるために自分の会社に働きかける立場にある。

 そういった見慣れないツールを持たせて人を遠方の後進国に送り込むのは、伝道とどう違うのか、とある人が質問を投げかけた。ヘリエ氏は、大きな違いは、世界中の政府がのどから手が出るほど支援を求めていることだ、と答えた。

 ただし、大手ソフトウェア会社は自社製品を伝道するために後進国に進出しているので、そういった活動を中和することが重要である。最終的な目標は、自立を助けることだ、とヘリエ氏は強調した。

 議論は進展して、このトピックを年に1回や2回のカンファンレンスのBoFセッションで話し合うだけでなく、もっと定期的に話し合えないか、ということに移った。セッションを始める前、ヘリエ氏はデジタルデバイドの橋渡しを論じるためのwikiを開設していた(olsdigitaldivide.wikispaces.com)。これに加え、今後の議論のためにIRCチャネルを作ることが参加者から提案された。これは、カーネルの開発者が長年やってきて実績のある方法である。そこで、IRCチャネルの#digitaldivideがirc.oftc.netに作成された。

 また、ヘリエ氏は注目すべきツールとして、Learning Activity Management SystemMoodle、そしてEdubuntuのシステム管理者不要のユーザービリティを挙げた。

ラップトップで使うLinux

 わたしが参加した最後のセッションは、Intelのパトリック・モーチェル氏主宰による、ラップトップでのLinux利用をテーマとするBoFだった。これは、特に議題やスライドを用意しない、オープンなBoFであった。このテーマに関係がある、HAL、udev、カーネル、ACPI、Bluetoothなどの開発者が来場していることが、モーチェル氏の口から明かされた。

 ディスカッションは、最新のラップトップのsuspend/resumeサポートと、このサポートの弱点に関する講演で始まった。suspend/resumeサポートは便利な機能だが、ラップトップの最重要事項であるバッテリの寿命に関しては何も恩恵はもたらさない、とモーチェル氏は指摘した。これを口火として、ラップトップで電力を浪費するさまざまなものに関する議論が長々と続いた。例えば、サウンドデバイスは活発な入力がない間は無効にされるべきであり、未使用のネットワークデバイスは無効にして電力消費を抑えるべきである。

 ディスカッションはたちまち進展し、ネットワークの状態に関する議論へと移った。ワイヤードネットワーキングであれば、ケーブルが接続されるまでネットワークデバイスをダウンさせておいて、ケーブル接続の割り込みを受け取った時点で稼働させることは可能だ、とモーチェル氏は述べた。ネットワークに接続されていないネットワークカードが稼働するのは電力の浪費であるから、これは効果的かもしれない。

 カーネルモジュールを削除しても、必ずしもデバイスへの電力供給が削減されるとは限らないと、会場から指摘があった。Fedoraでは、モジュールを削除しなければサスペンドを実行できない場合にだけモジュールの削除が行われると、ほかの参加者が発言した。

 別の参加者からは、ドライバによる電源管理の適切な設定方法を書いたドキュメントはあるのかと質問が出た。これにはストレートな返答はなく、ある人は、いったい何かのために適切にドライバを設定する方法を書いたドキュメントがあるだろうかと問いかけた。また、パッチをLinuxカーネル・メーリングリストに投稿して、意見を求めてはどうかという提案がなされた。

 議論は、さらにタブレットPCと回転式タッチスクリーンへと移った。タッチスクリーンのサポートは、ここ数年で強化されたが、それは主にuserlandにおいてのことだ。ある参加者が説明したが、タブレットの回転式ディスプレイの方向の確認は、両端で生じる空気圧の差を感知するセンサーによって行われる。

 回転式ディスプレイは、Xだけでなくコンソールにとっても問題だ、とLinux Internationalのジョン・ホール氏が発言した。これに答えて、パベル・マチェク氏は、2.6.16以降のカーネルではコマンドラインツールがコンソールを回転できると説明した。

 さらに議論は、IBMの新型ラップトップの多くに搭載された指紋スキャナのバイオメトリックへと移った。Microsoftは、次期バージョンのWindowsでバイオメトリックAPIに力を入れるという。バイオメトリックAPIはLinux用にも存在し、できは悪くない。指紋スキャナのサポートもあり、スキャナで読み取られた画像を保管された画像と比較できる。画像がハッシュされないため、この方法はセキュリティが低いと指摘する声が参加者からあった。ハッシュを使うのは、長年Linuxのユーザーパスワードを保護するために使われている方法である。

 4日間を予定したカンファレンスの2日目は、初日と比べてテクニカルなテーマが多く、特にデイブ・ジョーンズ氏のユーザー空間に関する講演はこの日のハイライトだった。

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