Ottawa Linux Symposium 3日目リポート(1/5 ページ)

一部ではLinuxWorld以上に重要視されているOttawa Linux SymposiumをDavid-"cdlu"-Grahamが精力的にリポートする。3日目はXenやDebian-Women、カナダの著作権法の最新動向などの最新動向を取り上げる。

» 2005年07月29日 01時11分 公開
[David-,japan.linux.com]

 今年のOttawa Linux Symposiumの3日目のリポートである。都合により午前中は参加できなかったが、午後の部では、Linuxの仮想化、コミュニティーにおける女性の活動、カナダの著作権法の最新動向といったテーマで興味深い情報がいろいろ提供された。

Xen 3.0と仮想化技術

 ケンブリッジ大学のイアン・プラット(Ian Pratt)氏は、まもなく公開予定のXen 3.0仮想化システムの特徴と、より全般的な仮想化技術の特徴について語った。Xenの現在の安定版リリースは2.4である。プラット氏の講演を聞いて、わたしは仮想化という技術をより深く理解できた。

 プラット氏によれば、仮想化とは、1つのOSイメージを使用してシステム上に複数のOSの外観を作り出すことである。つまり、巨大なchrootと言える。完全な仮想化とは、既存システムを包括的にエミュレートすることだ。

 擬似仮想化は仮想化によく似ているが、この場合、ホストOS上で稼動しているゲストOSは、自分が実際にはコンピュータを制御していないことを認識しており、ただの仮想マシンにすぎない。XenおよびUser-Mode Linuxは、どちらもこのカテゴリに分類される。

 今日の大部分のデスクトップ・コンピュータで一般的に採用されているx86アーキテクチャは、仮想化を想定した設計ではないため、プラット氏はこのアーキテクチャを仮想化にはまったく適さないと評した。

 プラット氏は「なぜ仮想化が必要なのか?」と問いかけ、この質問に対して非常に明快な答えを述べた。

 多くのデータセンターでは何百台、何千台ものマシンが1種類のOSを稼動しており、たいていの場合は、それぞれのマシンがたった1つのソフトウェアまたはサービスを実行している。仮想化を利用すれば、こうしたマシンの1台1台が複数のOSをホストでき、それぞれが独自のサービスセットを実行できるため、運営に必要なハードウェアの数を大幅に削減できる。

 Xenはこれをもう一歩推し進め、仮想マシン群を利用してロードバランス・システムとフェイルオーバー・システムを実現可能にする。

 プラット氏の説明によると、Xenクラスタ内のXen仮想マシンホストがハードウェア障害の予兆を検出した場合、そのホストは仮想マシンのゲストOSを別のノードに引き渡し、自身は適切な方法で終了できる。これにより、ホストしていたサービスを道連れにすることはなくなる。その間、ユーザーはサービスをほぼ邪魔されずに使用し続けることができるので、サービスの提供元が変わったことにほとんど気付かない。

 同じ構造に基づいて、Xen仮想マシンホスト群でロードバランスを実現可能だ。数台のホスト間でいくつかの仮想マシンが稼動している場合、このホスト群は、多忙な仮想マシンをあまり多忙でないホストに引き渡し、クラスタ内のどれか1つのノードだけが過負荷になることを回避できる。この手法により、同数のハードウェア上でさらに多くの仮想マシンを稼動できるので、組織のハードウェアコストをさらに削減することが可能である。

 仮想マシンホストサーバ内では、仮想マシンが悪意あるソフトウェアに感染するリスクを減らすために、個々の仮想マシンをしっかりと保護しなければならない、とプラット氏は指摘した。さもないと、同じサーバ上の別の仮想マシンにも問題が及ぶおそれがある。

 Xenを実行するには、カーネルだけを書き換えればよい。カーネル上のソフトウェアは、「大きなシステム内のスレーブOS」という自分の新しい役割を認識する必要はない。現時点では、XenはLinuxカーネル 2.4および2.6(.12)、OpenBSD、FreeBSD、Plan 9、およびSolarisに対応している。ゲストカーネルは他のカーネルと平行してハードウェアと通信しなければならないので、親OSを認識し、Xenを通じて親OSにアクセスできるようにするためにパッチを当てる必要がある。ゲストカーネルがシステムのハードウェアに直接アクセスしようとすると、たいていの場合は失敗する。

 Linux 2.6カーネルでXenを利用可能にするには、arch/カーネル・ソース・サブディレクトリを変更するだけでよい、とプラット氏は述べた。Linuxは非常に移植性が高いということだ。

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