誤解されがち? ディザスタリカバリの真の目的ディザスタリカバリで強い企業を作る(2/2 ページ)

» 2006年08月04日 11時50分 公開
[渡邉利和,ITmedia]
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 バックアップの目的は、データを保全し、障害などでストレージに破損が起こった場合でもデータ喪失を起こさないよう備えることだ。単に「コピーを取っておく」というだけに留まらず、万一の際にはバックアップからデータを復元することが必要になる。当然ながら「リストアできて始めてバックアップの意味がある」という存在だ。

 しかし、データが完全に破壊されてしまうような障害はそうそう頻繁に起こるものではない。このため、バックアップは欠かさず作成しているものの、整理がつい後回しになり、いざリストアが必要になった際に混乱することは珍しくない。

 また前述の通り、システム管理が属人的な作業となってしまい、「あの人がいないと何も分からない」という状況に陥ってしまうこともある。リストアの際に、状況を把握している担当者がいればスムーズに作業できるが、そうでないと誰も何も手出しできない、という状況だ。こうした状況を放置しておくのも、DRという観点からは大問題となる。

 DRを導入する際にまず考えるべきことは、バックアップサイトの建設ではない。むしろ、バックアップをどう取り、メディアをどう管理するかといった、当たり前の作業を明確化するところから段階的に対策を深めていくべきだろう。この際、特定の担当者だけでなく、誰でも復旧作業ができるように手順を明確化し、文書化して分かりやすい場所に保存しておくことも重要だ。

 こうして、バックアップから確実にデータをリストアできるように備えておくことは、DRのために多額の投資を行うことが難しい中小企業にとっても有効な対策となるはずだ。

バックアップデータはどこに置く?

 データのリストアという最も基本となる作業について対策ができたら、次の段階について検討しよう。ここからは、想定される事態に対してさまざまな要素を多面的に検討する必要があるため、何を優先するかについて決まった方針が確立されているわけではないが、一例として大まかな方向性を示しておく。

 まずは、バックアップメディアの保管場所についての検討が必要だろう。

 通常は、作業の利便性から、バックアップを実際に作成する場所の周囲にメディアを保管していることが多い。たとえば、サーバルームにサーバと一緒にテープドライブなどが設置されており、そこにバックアップテープも一緒に保管されている、といった具合だ。こうした方式は、重要なIT資産をサーバルームで一括して管理できるため、セキュリティ面でも対応しやすい面があるし、何より必要なものがすべて1カ所にそろっているので作業は楽になる。

 半面、阪神淡路大震災や米国同時多発テロの例をみれば明らかなとおり、建物が丸ごと崩壊するような大災害の際にはすべてを失うというリスクに直面することになる。このため、安全性を考えれば離れた場所にバックアップテープを保管し、運用中の主システムとバックアップが同時に失われることを避けることも必要になるだろう。

 ただし、遠隔地にバックアップを保存するには、相応のコストがかかることに注意が必要だ。ネットワークを通じてデータをコピーするか、バックアップテープを運搬するのか、手法はいろいろ考えられるが、いずれにしてもコスト増につながることは避けられない。

 さらに、重要なデータを分散して保存する場合、それぞれの保存場所で適切なセキュリティを確保する工夫も必要になり、これもまたコストを増やす要因となる。

 運用中の利便性という観点から考えると、主システムが障害で停止した際に、バックアップテープを入手するのに時間がかかるのを避けたいという要求もあるだろう。運用管理の利便性から考えると、サーバルームにバックアップを保存しつつ、遠隔地にもコピーを確保しておく、というやり方になりそうだが、その場合はバックアップの管理が煩雑になる上、メディアのコストも倍増することになる。

 バックアップに関しては、時間的な間隔も重要な検討事項だ。

 システム復旧という観点から言い換えると、障害発生時点を基準として、どの程度前の状態に復旧できるか、という考え方になる。仮に業務が9時から17時までの会社で、毎日終業後にバックアップを取っていたとすると、最悪のケースでは丸1日分のデータが喪失する可能性がある。

 データ喪失が一切起こらないようにリアルタイムでバックアップをとり続けるシステムも技術的にはもちろん実現可能だが、すると今度はコストの問題が生じる。バックアップの保存場所の分散と組み合わせて考え、しかもリアルタイム性を追求すると、必然的にネットワークを活用することになるだろう。

(続く)

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