新しいOfficeのファイル形式、管理者の負担を減らす移行方法は?Tech・Ed 2006 Yokohama

開催中のTech・Ed 2006 Yokohamaでは、新しいOfficeについてのさまざまな情報が提供されている。ここでは、新バージョンのOfficeで採用されるOpen XML Formatsへ、既存のドキュメントを移行させる方法について取り上げる。

» 2006年08月31日 17時52分 公開
[下村恭(ハンズシステム),ITmedia]

 新バージョンのOfficeであるthe 2007 Microsoft Office System(以下Office 2007)では、ファイルの保存形式として、規格がオープンにされているOpen XML Formatsが採用される。このファイル形式は、Word、Excel、PowerPointの保存形式として使用され、従来の.doc、.xls、.pptとの間に互換性はない。

 Open XML Formats形式のファイルには、.docx、.xlsx、.pptxと、拡張子の末尾にxが付加されたものとなり、ファイルの拡張子を見ただけで区別がつけられるようになっている。マクロの有効なファイルにはxの代わりにmが使用され、マクロが設定されているファイルかどうかについても、拡張子を見るだけで区別できる。また、.dotなどのテンプレートファイルについても、同様の規則が適用される。

 Open XML Formats形式の利点は、その名のとおり、いまや標準となっているXMLが使用されたフォーマットを採用したことで、Office以外のソフトウェアとデータを相互に受け渡しすることも可能になることだ。Officeの保存ファイルは、文書に埋め込まれた画像など複数のアイテムを含む。したがって、XMLだけで表現できないアイテムもまとめて保存するよう、Open XML Formats形式のファイルはZIP形式で圧縮されており、保存に必要な領域を削減できる。

 実際、Tech・Edのセッション中にも実演されたが、.docxの拡張子を.zipにすることで、複数のファイルやフォルダで構成された.docxの中身を見ることができた。

Open XML Formatsのアーキテクチャ。複数の異なる種類のデータをひとつのファイルに圧縮して保存する仕組みになっている。(Tech・Ed 2006、T2-303「the 2007 Microsoft Office systemクライアントアプリケーションの展開と新しいファイル形式」より引用)

 当然のことながら、ファイルの保存形式が変われば、互換性の問題も生まれる。これに対するマイクロソフトの回答は二通り用意されている。

 ひとつはクライアント側(Officeアプリケーション側)での対応だ。もちろん、Office 2007でそれ以前の古いOfficeドキュメントファイルを読み込んだ場合は、正常に読み込まれ表示/編集が可能だ。例えば、Office 2007のWordで.docを読み込んだ場合、.docのまま処理されることになる。ここで注意が必要なのは、編集しているファイルの形式が古いと、使用できる機能が制限されることだ。

 Office 2007ではさまざまな機能が追加拡張されている。これらのうち、旧バージョンが備えていない機能については、旧ファイル形式を使用している間は使えないようになり、互換性やファイルのやり取りにおける問題を回避できるようになっている。もちろん、Open XML Formats形式で保存されたファイルを、名前を付けて保存で旧ファイル形式で保存することも可能で、この場合は、Office 2007の新機能を利用したコンテンツは、旧バージョンで使用可能な形式(例えば画像など)に変換されるようになっている。

 逆のパターンも可能だ。つまり、Open XML Formats形式のファイルを、旧バージョンのOfficeアプリケーションで読み込むという例である。この機能を実現するために、旧バージョンのOffice(Office XP、Office 2003のみ)向けにCompatibility Pack for Microsoft Office 2007 File Formatsが提供される(現在、the 2007 Microsoft Office Preview Siteからβ2版をダウンロード可能)。

 Compatibility Packが導入されていない状態でOpen XML Formats形式のファイルを開いたときに、Compatibility Packのダウンロードサイトに誘導するダイアログが開くようにする予定もあるという。

 これらは、Officeがインストールされているクライアント側で、ファイル形式の互換性を確保する方法だ。しかし管理者の立場から見ると、サポートすべき対象が増えるだけであまりありがたくない。そこで可能であれば、社内のOffice製品を一気にOffice 2007にリプレースしてしまうという方法を模索することになる。

 この場合問題になるのが、旧フォーマットの文書の扱いだ。マイクロソフトでは管理者向けのツールとして、「Office Migration Planning Manager(OMPM)」を提供する。OMPMは複数のツールをまとめたもので、その中身は次の3つのツールで構成される。ファイルサーバなどに格納されているオフィス文書を探して内容を精査するスキャナ、探し出した文書の情報をSQL Server2000/2005に格納およびインポートなどを行うバッチファイル、DB上のデータを解析してレポートを作成するAccess 2007ベースのレポートツールである。

管理者向けのOffice文書分析ツールであるOffice Migration Planning Manager(OMPM)。スキャンツール、DBツール、レポートツールを組み合わせて使用する。(TechEd2006、T2-303「the 2007 Microsoft Office systemクライアントアプリケーションの展開と新しいファイル形式」より引用)

 また、OMPMでコンバート可能と判断できたファイルは、OMPMからエクスポートしたデータに基づいて、Office File Convrterで一括変換することができるようになっている。

 OMPMとOffice File Converterを使うことで、ローカルフォルダのみならず、ネットワーク上のすべてのOffice文書を精査し、Open XML Formatsに変換できるかどうかをレポート表示できる。この結果をもとに、社内のOffice文書をOpen XML Formats形式にコンバートしておくことも可能となる。

 ただし、パスワードが設定された文書や、IRMで保護されている文書はこのツールでは精査できない。そのため、社内環境がこれらのツールを適用できる状況にあるかどうかを、判断しておく必要があるだろう。

 いずれにしても、エンドユーザーが操作したときだけファイル変換が行われる場合と異なり、管理者側で利用可能なツールが用意されることで、Office 2007への移行シナリオに幅を持たせることが可能となった。Office 2007のリリースまではまだ時間があるが、管理者としては、今の時点から、Office 2007への移行タイミングやシナリオを検討しておくべきだろう。

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