Sun、JRubyプロジェクトを社内に取り込み

Sunは9月7日、「JRuby」プロジェクトでリーダー的な立場にあるチャールズ・ナッター氏とトーマス・エネボー氏が、同社の社員として迎えられることになったと発表した。

» 2006年09月11日 16時01分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 Sun Microsystemsは、「JRuby」プロジェクトでリーダー的な立場にある2人の開発者を雇った。JRubyは、JVM(Java Virtual Machine)向けのRuby言語のインプリメンテーションの開発を目指すオープンソースプロジェクトである。

 カリフォルニア州サンタクララに本社を置くSunのソフトウェア部門のリッチ・グリーン執行副社長は9月7日、シアトルで開催されたSun Tech Daysのキーノートスピーチの中で、JRubyのチーフメンテナーであるチャールズ・ナッター氏とトーマス・エネボー氏が今月、Sunの社員になると発表した。Sunの広報担当者によると、両氏はフルタイムでJRubyの開発に取り組み、特に開発ツールに注力する予定だという。

 またSunは、「JavaプラットフォームはJava言語だけにとどまらない大きな存在であると当社は確信しており、開発者に選択肢を与えるという考え方を支持する。当社はJavaプラットフォーム上で複数の言語をサポートする計画だ。加えて、Javaプラットフォームとほかの言語との間の相互運用性に向けた取り組みも進めるつもりだ」と発表文で述べている。

 SunでWeb技術ディレクターを務めるティム・ブレイ氏は、ブログの記事の中で、Sunが2名の開発者を雇い入れることに関して予想される質問に答えている。Sunが両氏を雇った理由については、「まず、彼らは優秀な開発者であるということだ。Rubyのような技術は開発者コミュニティーの間で強い関心を呼び起こしており、Sunは開発者が興味を抱いているものに関心がある」と説明する。

 またブレイ氏の説明によると、ナッター氏とエネボー氏がRubyに関してSunで果たす役割は、ジム・ハグニン氏がPythonに関してMicrosoftで果たした役割と同じであるようだ。「両氏の役割は、JRubyをバージョン1.0に仕上げ、主要アプリケーションがスムーズに動作し、優れた性能を発揮できるようにすることだ」とブレイ氏は記している。

 両氏はフルタイムでRubyの開発に当たるが、「開発ツールについて考えることも両氏に課せられる任務である」とブレイ氏は述べている。「Java開発者と比べると、PythonやRubyなどの動的言語を利用する開発者は今のところ、貧弱な環境に置かれている」

 皮肉なことに、ハグニン氏が動的言語のPythonを.NETプラットフォームに対応させたインプリメンテーションである「IronPython」は先週、バージョン1.0の段階に到達した。ハグニン氏がeWEEKに語ったところによると、各種の動的言語をMicrosoft CLR(Common Language Runtime)上でサポートすることも同氏の任務の一部だという。CLRは、JVMに相当するMicrosoftの技術である。

 ハグニン氏によると、CLR用の最初の動的言語としてIronPythonをインプリメントした経験のおかげで、RubyやPHP、Perlなどの言語をCLRに対応させるのが容易になるという。

 ブレイ氏はブログ記事で同じような考えを述べている。「最も重要なのは、この取り組みの経験を通じて学ぶことであるだろう。まず、Rubyのような動的言語は、ソフトウェアのメインストリーム分野で受け入れられ始めたばかりであり、ベストプラクティスやツールもこれから登場するという段階だ。第2に、われわれはプログラミング言語のRubyを、JRubyという形でJava開発者のコミュニティーに提供したいと考えている。一部の分野では、既存のRubyアプリケーションにとってJavaプラットフォームが魅力的な配備オプションになる可能性がある」

 ナッター氏は自身のブログの中で次のように述べている。「最大の目的は、JRubyにとって必要な関心を喚起することである。SunはJVM上でのRubyの可能性を見逃さなかった。われわれは、JRubyをできる限り完璧で、性能が高く、堅牢なものに仕立て上げることに専念する。さらに、Rubyに対するツールサポートの拡充に取り組む一方で、Rubyの開発環境の改善を求める多くの開発者の声に応えるつもりだ」

 さらにナッター氏は、「わたしがこの1年間にわたって心血を注いできたプロジェクトに引き続き携わることができるだけでなく、この作業を通じて、わたしのお気に入りの企業が技術的課題を克服するのに協力できる機会を楽しみにしている」と述べた。さらに同氏は、Ruby開発コミュニティー全体の発展に貢献したいと言う。

 エネボー氏も、Sunに入社することについてブログの中で述べている。「これはわたしにとって、個人的なレベルで極めてエキサイティングな機会だ。これによりJRubyの開発は飛躍的に前進するだろう。今後数カ月で大きな前進があるものと期待していただきたい。JVM用の追加言語の重要性をSunが理解していることに大いに感銘を受けた」

 SunでJava Studio Creatorツールの開発を担当するエンジニア、トー・ノーバイ氏は、既存のJavaプロジェクトと新しいJRubyプロジェクトの間には多くの“相互交流”作用があると予想している。

 ノーバイ氏はブログの記事の中で、「この取り組みは、JVM上で複数の言語、特に動的言語とスクリプティング言語をサポートするという当社の戦略に合致する。実際、チャールズとトーマスはわたしと同じグループに入ることになるため、BASICのサポートに向けてわれわれが構築した多数のツールのサポートがJRubyにも恩恵をもたらすものと期待される」と述べている。

[Darryl K. Taft,eWEEK]

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