SOAを実現しやすくする組織と人材動き出したSOAのいま(2/3 ページ)

» 2006年09月22日 08時00分 公開
[生熊清司,ITmedia]

CIO機能を補完してSOAを実践する「COE」

 情報システムにおけるSOAの導入に限らず、組織での意思決定プロセスは大きくトップダウンとボトムアップに分けられる。ボトムアップ型の意思決定は現場の声を反映するという点では適切だが、局所最適の弊害が生じるリスクがある。システムが縦割り化し、相互運用に困難をきたす状況にある日本企業のほとんどが、多かれ少なかれこのような問題を抱えている。ゆえに、アーキテクチャー設計プロジェクトがトップダウン型で推進されるのは当然の流れであろう。

 そもそもアーキテクチャーという言葉自体に、共通の標準をトップダウンで決定していくというニュアンスがあるのは否めない。よって、トップダウンを行う場合には強力なリーダーシップを発揮できる人物、つまり経営とIT両方の知識と経験を有し、情報システムの統括を含むIT戦略の立案や執行を主たる任務とする役員または執行役員、CIO(最高情報責任者)が必要になる。

 しかし、ITRの「IT投資動向調査2006」調査結果では、専任のCIOが存在する企業は1割にも満たず、兼任を含めても4割弱しか存在していない。したがって、国内ではCIO機能を補完または補佐する組織が必要なのではないだろうか。

 CIO機能を補完しSOAを実践する組織は、現実のシステムを構築する以前に関係各所からの情報収集や意見調整などを行わなければならない。そのためには、エグゼクティブの理解を得て、組織間で十分な情報共有を行うことが求められる。つまり、情報システム部門のみで組織を形成するのではなく、経営企画部門や利用部門などからの参画が必要となる。このような組織の形態に適合しているのはCOE(センター・オブ・エクセレンス)である。

 COEとは、国内では2002年に文部科学省が開始した研究拠点の助成金制度により、学術的な分野での中核的な研究拠点を指すことが多いが、欧米企業では実際にさまざまな業務におけるベストプラクティスを集結したセンターとして組織に配置されている。

 欧米企業のCOEは単なる知識の集約ではなく、実行することに重きを置いている。そこには、知識や最高レベルのビジネスツール(テンプレート、プロシージャ、レポート)および連帯意識というCOEの基礎的な概念に、チームワーク、複雑性管理、分析、管理、およびリーダーシップというプラクティスが加えられている。またCOEは、仮想組織やプロジェクトチームなどよりも永続性が高く、マトリックス型組織よりも協働指向や問題解決指向が強い構造とすべきである(図1)。

図1 図1●COE組織のポジション(出典:ITR)

 SOAにおけるCOEは、エグゼクティブ・スポンサーの配下において、自社の業務要件や既存システムのアーキテクチャーを分析し、サービスカタログを作成しなければならない。また、現状のビジネスプロセスの問題点を発見し、将来の最適化されたモデルを構築していく必要がある。

 したがって、COEには情報システム部門以外に経営企画部門、既存システムのオーナー部門、システムの利用部門などの組織からのメンバー参画が必要となる。また、必要に応じて外部のコンサルタントの参画を検討すべきである。さらにCOEの配下には、実際にサービスの定義と実装を行う開発チームが必要となる。このチームには、SOA化したシステムのパフォーマンス、セキュリティ、信頼性を評価・管理する機能を持たせるべきだ(図2)。

図2 図2●SOA実践組織体制の例(出典:ITR)

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