登下校情報メール配信サービスは、学校のITインフラとして普及するか驚愕の自治体事情(2/2 ページ)

» 2006年10月25日 08時00分 公開
[中村文雄,ITmedia]
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携帯電話メールが最も速くて簡便な連絡ツール

 ホットコンパスへのメールアドレス登録は、各団体で方法を選択できる。学校側が一括して登録するケースや、IDとパスワードを保護者に渡して、保護者が自分でメールアドレスを登録するケースがある。ホットコンパスでは2つのメールアドレスまで登録可能で、多くの保護者は2つのメールアドレスを登録するという。トッパン・エヌエスダブリュ・開発営業グループ営業第二チームリーダーの関田繁氏は次のように説明する。

 「ほとんどの保護者は携帯電話およびメールアドレスを持っている。多くの方がメールアドレスなどの個人情報をなるべく公開しないように努めており、自分でメールアドレスを登録するケースが多くなっている」

 ホットコンパスでは保護者のメールアドレスへ緊急情報を流すことができる。最近では個人情報保護の観点から保護者の連絡網がない学校が多い。そのようなケースでは先生が保護者全員に連絡をしているが、朝から緊急連絡を開始してもすべての保護者に連絡が行き渡るのが夕方になるケースもあるという。ホットコンパスを使えば、一括で送信が可能なため学校側の負担は軽減される。

 「お客様からは『GPS携帯電話と比較するとどうなのか』と質問されることもあります。ホットコンパスはGPS携帯電話より相当安価で、用途も『学校に入った』『学校を出た』とメール連絡することに限定しています。子どもを見守るためにはホットコンパスは有効ですが、通学中の安全をモニターできる監視カメラやGPS携帯電話も重要なツールです。将来的には地域の環境に合った手法を幾つか組み合わせて安全を確保することになるでしょう」(荒川氏)

 GPS携帯電話を子どもに持たせることはコストも高く、生徒全員が利用するのは現実的ではない。ホットコンパスのように運用コストが一人月額300円程度ならサービスとして公立学校でも導入できる可能性がある。

 「公立の小中学校からホットコンパスについて問い合わせがあります。PTAでは導入を希望する声が多いのですが、実際に導入するとなると課金の問題があるため、難しい面があるようです」(関田氏)

 凸版印刷が2006年5月に発表した「子どもの安全・防犯についての調査」によれば、「子どもの生活環境に『不安』がある親は92%」という結果がでている。実施されている安全対策としては、「防犯ベル・ブザーの支給が42.5%」「安全教育が35.8%」があげられている。実施して欲しい安全対策として、「安全教育が26.9%」「専門会社によるガードマンが26.9%」「教員による登下校時のパトロールが25.8%」で、四番目に「登下校の通知サービスが25.3%」がある。システムを利用するサービスでは、登下校メール配信サービスが最も必要とされているという結果となった。

幅広い用途の可能性がある登下校メール配信サービス

 私立学校や学習塾では、他との差別化を図るために安全が1つのセールスポイントにもなっており、登下校メール配信サービスを積極的に導入するケースがある。2006年4月にホットコンパスを導入したある私立学校は父兄からの要望もあり、2月に検討を開始して4月に導入するというスピーディーさだったという。

 「2006年10月中旬には大手進学塾100拠点で約4000名の生徒にサービスを開始しました。ホットコンパスの利用者は、2006年10月時点で約6000人。学校関係は年度はじめから導入するケースが多いので、2007年4月からのサービス導入に期待しています。2007年度の目標ユーザー数は6万人。この分野でトップシェアを狙いたい」(荒川氏)

 ホットコンパスの利用は学校や学習塾だけとは限らない。10月末に開催される凸版印刷の製品展示会でホットコンパスを利用するという。

 「お得意様にホットコンパスのIDカードを招待状としてお渡しし、来場くださったときにカードライターにかざしていただきます。そうすると営業担当者にメールが届くので、すぐにご案内に伺うことができます。2000人以上のお得意様に配布する予定です」

 ホットコンパスは、企業で勤怠情報を管理したり、スポーツクラブなどで会員の利用状況を把握したりすることに利用できる。また、一人暮らしの老人の安否確認にも利用可能である。

 今後、ホットコンパスのような登下校メール配信サービスは、保護者からの高いニーズがあることを考えると、学校のITインフラの一部として導入される可能性がある。また、自治体の安全インフラとして、このようなシステムを学校、学習塾、老人施設、病院、スポーツ施設などに地域ぐるみで導入することも考えられるだろう。携帯電話、インターネット回線が普及した現在、自治体として取り組みむべき課題の1つではないだろうか。

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