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» 2006年10月26日 08時00分 UPDATE

驚愕の自治体事情:川崎市、初の“環境配慮型”ミニ公募債を発行

川崎市では、環境配慮を目的としたミニ公募債を発行した。国債との金利差額分を緑化推進事業に充当するなど環境配慮を目的としたミニ公募債は川崎市がはじめてとなる。

[丸山隆平,ITmedia]

CSR活動支援の位置づけも

 1999年に成立した「地方分権一括法」により、地方自治体の財源を支えてきた地方交付税、国庫補助負担金などの公的資金は確実に縮小しており、自治体は自己決定・自己責任による資金調達が求められている。一方で、地方分権一括法は起債についてそれまでの許可制から協議制へと移行し、民間からの効率的な資金調達を容易にした。

 こうした背景から、自治体が債券を発行し、資金調達を行う事例が増えている(関連記事参照)。その手法の1つである住民参加型ミニ市場公募債(ミニ公募債)については、こちらの記事で説明したが、自治体が使途を明らかにして公募する債券で、購入価格が1万円単位からと購入しやすく、対象もその地域の住民や企業に限られることが多い。2002年3月に群馬県が県立病院整備などを目的に発行した「愛県債」が第1号で、2003年度は80団体、2004年度は93団体、2005年度は105団体、3445億1880万円分が発行されるなど、同債券を発行する自治体は年々増加している。

 こうした中、川崎市では、“環境配慮”を目的としたミニ公募債「川崎緑化推進債」を2006年9月に発行した。環境配慮を対象としたものは川崎市がはじめてとなる。

 今回川崎市が発行する川崎緑化推進債は金利を国債と同程度に設定し、通常の市債との差額を市の緑化基金に積み立て、緑化事業に活用するのが特徴だ。

 募集は8月30日から9月15日まで行われた。購入者は市民のほか、市内の企業も多い。また、「金融機関はその業態からCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)への取り組みが遅れており、CSR活動の一環として販売していただいている」(川崎市財政部資金課)ということだ。

躍進著しい川崎市

 川崎市は、人口増加率5年連続で全国1位、出生率も15年連続で全国1位、労働力率も名古屋市を上回り全国1位と大都市の中でトップにある。また、経済成長率、従業員1人当たり製造品出荷額、情報サービス業、学術・開発研究機関に従事する人の比率も大都市の中でトップ。

 かつての“公害の町”というイメージが一部には残っているが、同市の市長である阿部孝夫氏は、川崎フロンターレなどを例に挙げ、「文化・スポーツの町」へと生まれ変わったと話す。さらに、武蔵小杉駅周辺地区では、「川崎再生フロンティアプラン」に基づく研究開発・生産機能の高度化と良好な住環境の統合を目指した大規模な開発が予定されていると川崎市の現状について述べている。

20億円を緑化事業に充当

 川崎緑化推進債で集まった資金20億円は公園緑地施設、自然保護対策、リサイクルパークの整備などの財源に充当する。さらに、この市債は、利回りが年1.32%(6年満期)と国債と同等程度に設定されており、通常の市債との金利軽減分である年0.14%相当分を緑化基金に積み立てるスキームとなっている。この金利軽減分の6年間の合計額は1680万円に達する。

tnkawa.jpg 川崎緑化推進債のスキーム

 ちなみに、川崎緑化推進債を100万円分購入した場合、緑化基金への協力額は6年間の合計で8400円に相当する。

 また、10万円分以上を購入した者の中から抽選で50組100名を、ミューザ川崎シンフォニーホールのコンサートに招待するほか、市債購入者で希望者は市のホームページにも名前を掲載される。

 2006年度においてこの資金は「市民による10万本植樹事業」に充当され、9月に海風の森(浮島町公園)で植樹祭を行ったほか、市民・企業とグランドワークで1万本の植樹を行う。

 川崎市では、ヒートアイランド現象の緩和や都市景観の向上などに向けて、緑の保全や緑化の推進に努めている。将来に残せる森づくりを進めるために企業と市民が共同して当たる事業を進めており、「市民による10万本植樹事業」はその一環だ。

市長がIR活動を推進

 阿部市長が目指しているのは、川崎市債のブランド力、存在感の向上であり、市債に関しては、販売力・引受意欲のあるシンジケート団(通称:シ団。一般には国債募集引受団で、ここでは市債の引き受けを行う団体)メンバーを厳選する一方で、適正な競争力を確保するため、定量的・定性的評価を行い定期的なメンバーの見直しを図る。さらに、個別条件決定方式への移行を予定している。事実、11月には5年債の起債から個別条件決定方式に以降する計画だ。

 環境にまで配慮した自治体運営。その先べんとなる川崎市の手腕が注目される。

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