教育現場にFOSSを普及させるにはMagi's View(3/3 ページ)

» 2006年11月22日 08時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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避けるべきやり方

 FOSS支持者に活動を継続してもらうには熱意が重要になるが、経験のある者は熱意を示しすぎることに対して注意を促している。アーカイレシャン氏は次のように語る。「はじめてLinuxにのめり込んだとき、わたしは興奮して周りの人々をLinuxに移行させようとした。だが今はもうそんなことはしたくない。熱意も度を越すと、何か裏の思惑があるか、常識をなくしたかのどちらかだと思われるものだ。現在のわたしのやり方は、FOSSの良さを力説したりMicrosoftを批判したりといったことをしないという意味で、時間に委ねるものだといえる」。むしろ彼は、FOSSの明らかな利点をFOSS自体に語らせる方がいいというのだ。

 トラスク氏もこれに同意している。「わたしがこの数年で学んだ最大の収穫は‘ただ支持すること’だった。FOSSのことで大げさに騒ぎ立て、その価値を尊大に語り、あるいはFOSSについて独りよがりな態度を取ることに多大な時間を費やしてはならない。あたかもFOSS以外のソフトウェアであるかのようにFOSSをただ使い始めることだ」

 支持者としてはFOSSの価値を強調するのではなく、ソフトウェアを購入する余裕のある生徒だけでなく、すべての生徒に届けることができる点と信頼性に重点をおくべきだ、とハリソン氏は述べている。反対に、ソースコードが入手できるという利点については語らないように彼は忠告している。「核心となる基本的な問題に言及することだ」と彼は主張する。平均的なFOSS支持者に耳を傾ける人々は「何か具体的なテクノロジーの全般について特に不安があるわけではなく、その信頼性と利用可能性について不安を感じている。大事な点だけを話せば、耳を傾けるだけでなく、試しに使い始めようともするだろう。試しに始めてみてFOSS支持者の言葉が正しかったことが分かれば、彼らはかんり態度を軟化させるはずだ。誰かがやって来てオープンソース開発者による活動のやり方をまねて成功した、などという事例は聞いたことがない」

 同様の理由から、支持者は小さな変化を少しずつ積み上げることに集中する必要がある、とハリソン氏は話している。「大規模で劇的な変化を期待すると失敗しがちだ。教育組織を動かすものは何かを理解する必要がある。教員や管理者の考え方に合わない特定の思想を押しつけようとしても、うまくいかないだろう。全員の利害を一致させなければならないのだ」。ハリソン氏によるこのアドバイスもアーカイレシャン氏やトラスク氏の言葉と同様、聞き手が容易に理解できる売り込み方をするのが有利であることを意味している。

成功の見込み

 ハリソン氏は学校内のFOSS支持者に対して、ほかのどんなことよりも「何をするにしても非常に長い時間が掛かることを覚悟する」ように警告している。程度によらずFOSSの利用を学校や地域に納得させるには普通で2〜3年かかり、5年かかった例もある。ただし、FOSSに適応するペースは、一般に説得の対象となる人数と官僚組織の階層が少ないことから、私立校の方が公立校よりも速いとアーカイレシャン氏は示唆している。

 成功は決して確実なものでも普遍的なものでもないことをハリソン氏は認めている。しかし彼は、FOSSが教育関連のコンピューティングにおける大半の技術革新よりも成功の確率が高いことにも触れている。ハリソン氏の経験によると、標準的な技術革新の成功率は50%ほどだという。これに対し、FOSS導入の成功率は75%以上あり、特に本稿に記した方法に従えば成功率はより高くなるはずだ。

 この成功率の高さは主として、十分な時間があれば現代のFOSSはおのずと実力を発揮することに起因する、と専門家はみている。「物事は、思考におけるパラダイムシフトの発生と広範囲における唐突な利用の増加というところに行き着くことがやがて分かるだろう」とトラスク氏は話している。自らが長い間FOSSの支持活動を行ってきた年に一度のメイン州での技術的な集会に触れ、彼は次のように言っている。「よかったらどうかな。今年は発表しないつもりだけど、われわれがどこまで進歩したかは分かるよ」。まだやるべきことは残っているとはいえ、トラスク氏にとって、数名の同志とともにFOSSを支持してきた孤独な闘いは過去のものとなり、今やFOSSへの取り組みは大きな流れになっている。

Bruce Byfield氏はセミナーのデザイナー兼インストラクターで、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリストでもある。


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