速度よりもサービス――無線BBの急先鋒、WiMAXがもたらすもの無線LAN“再構築”プラン(2/3 ページ)

» 2006年11月24日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

国内の事業者選定はどうなる?

 WiMAXのもっとも大きな「課題」は、適切な使用周波数の確保にある。通信事業者が安定したサービスを提供するためには、免許周波数帯が必要だ。前述のように現在、総務省の「広帯域移動無線アクセスシステム」の配下にある「技術的条件作業班」(作業班)が、2.5GHz帯を使った無線ブロードバンドサービスの実現に向け、周波数の問題など技術仕様を検討しているところ。無線ブロードバンドサービスの技術仕様としては、WiMAXのほかにもウィルコムが提唱する次世代PHS、クアルコムが推すIEEE 802.20などが候補に挙がっているが、現時点はWiMAXが有力候補となるようだ。

 2.5GHz帯では、無線ブロードバンド用に2.535GHz〜2.630GHzの95MHzの幅が用意されている。しかし、この周波数帯の両端にある衛星システムとの干渉や、異なる無線方式が混在した場合に起きる相互干渉を避けるために、いわゆる「ガードバンド」を設定する必要があり、その詳細について詰めている段階だ。この点について、KDDI ワイヤレスブロードバンド開発室長の要海敏和氏は、次のように語る。

画像 KDDI 技術開発本部技術戦略部の要海氏

 「先ごろ作業班の最終会合があり、ここで隣接の衛星システムとのガードバンドが上側(モバイル放送)で5MHz、下側(NTTドコモ)で10MHz、また下側にはさらに期限付きの利用制限(基地局の出力を落とすことが条件)を設けた保護バンド10MHzを設定する方向で検討されることになった。残りの80MHzにおいて、無線ブロードバンドアクセスで同期が取れる場合はガードバンド幅を1MHzに、それ以外は5MHzとして共用される可能性がある」

画像 無線ブロードバンドでの周波数割り当ての問題。利用可能な周波数帯域は95MHz。干渉を防ぐガードバンドの幅によって事業者数が決まる

 最終会合を受けて審議会が開かれ、最終的に12月中旬に答申がなされるという。ここで、ようやく無線ブロードバンドアクセスの2.5GHz帯での技術的な検討が終了することになる。最新スケジュールから推測すると、年明けには割り当て事業者数や割り当て条件を示す「免許方針」が示され、通信事業者がそれぞれの事業計画案を提出する。そして、2007年夏ごろまでに最終的な事業者が選定される見込みだ。したがって、基地局などのインフラの準備や端末の調達なども含めて実際のサービスが始まるのは、最短でも2008年下期になる模様だ。

 現時点では、事業者が何社に絞られるのか微妙なところだ。80MHzの帯域の中で、ガードバンド幅も考慮して10MHzずつ割り当てられたと仮定すると、事業者数は最大7社ということになる。しかし、割り付けられる帯域幅によって事業者の計画もサービス内容も変わってくるため、2〜4社程度に絞られそうだ。要海氏は、実際には10MHz幅といった細切れの設定にはしないだろうと予想している。

 もちろん、割り付けられる周波数の幅によって提供されるサービスの速度も変わってくる。WiMAXでは、最大75Mbpsの通信を実現できるとうたわれているが、同氏は「10MHz幅の場合に、ピークスループットは下り20Mbps、上り8Mbpsぐらい。20MHz幅になれば、この値は倍以上にはなる。さらにMIMOなどのアドバンス技術を利用すれば、理論上は80Mbpsとなるが、1つのセクタでの平均実効速度はモバイルでも最終的に下りで約25、26Mbps程度にまではなるはずだ」という。

 KDDIが実施したモバイルWiMAXの高速走行実験では、時速80km程度の移動速度による速度低下の影響はなく、ハンドオーバーも速度に依存せず安定した切り替えができたという。物理シミュレータでは、120kmにまで対応できることが分かっている。

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