第1回 コミュニケーションを円滑にするコーチング現場で使えるコーチング術(2/2 ページ)

» 2006年12月20日 14時00分 公開
[杉浦麻耶,ITmedia]
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にわかコーチングに注意

 あなたのまわりにこんな上司はいないだろうか? 書籍から得た知識や数回の研修でコーチングをマスターした気になり、「本音を引き出し、部下を操作しよう」と考える典型的な「なんちゃってコーチ」である。心理学を少しかじったことを理由に自分は人心掌握ができるはずだと思いこむ人もこれと同類として挙げられる。

 言うまでもないが、力をいれて、相手の心に土足で踏み込んでいくのは、コーチングではなく単なる命令や押しつけでしかない。コーチとなる人の感情や方法論を発信することが重要なのではないのだ。

 例えば、「君、この企画のビジョンは?」「将来的に会社で何がやりたいんだ」などと唐突に聞くのは愚の骨頂である。部下の活気を上げたいのなら、「この間の成功した企画はいつ思いついたのかな?」といった、必ず答えられる質問を相手に投げかけ、小さな情報をまずは聞き出していくのがベターである。相手に「答えがない」ということは、生きている以上まずないと考えてよい。相手を信頼して遠回りをしてもいいから待つことが大切なのである。

 そのために、コーチは聞くことに集中する。その中で、「はい/いいえ」で答えることのできない、オープンクエスチョンで質問をしながら話を要約していき、最終的には、相手の目標をサポートしていくのが本当のコーチングなのである。

誰もが持っている能力をアウトプットしてくれる

 それでは、具体的なコーチングの流れとはどういったものか。コーチは、現状を把握しながら目標を達成するための明確な考えを導いてくれる。コーチは相手に鮮明なイメージが沸くように、具体的に内容を落とし込み、問いかける形で答えを導いていくのだ。通常、電話や対面で行われるコーチングは、週1回程度、定期的に行われることが多い。

 例として、会社で営業ナンバーワンをめざす社員に対するコーチングの流れをまとめてみた。

最初に、コーチは社員に対し目標や望む状態を聞きだす。

コーチ 目標はなんですか?

社員 営業成績社内ナンバーワンになりたい

コーチ 具体的に望んでいる状態は?

社員 成績もナンバーワンだけれど、お客様にされる営業でありたい

次に現状を把握していく。

コーチ 現状の社内での成績は?

社員 現在は2番手ですね

コーチ 理由はどうしてだと思いますか?

社員 ナンバーワンの人に比べて、顧客の情報量の調べが少ないのかもしれない。だから成績も上がらないし、ナンバーワンの人のようには支持されないのだと思う

コーチ では、相手の情報をもっと把握すれば、お客様の心を捉えることができ成績もアップするということですね

社員は、現状を聞かれることによって問題点がみえてきたようだ。

コーチ では、どのような策が考えられるのでしょう?

社員 お客様の情報をもっと丁寧に調べて、対策や企画を立てる必要があります

コーチ そうですね。情報の見直しをすればお客様の気持ちを掴む要素が増える上、営業成績もあがる結果になりそうですね


 自分で考えることは簡単だと思っていても、誰かにアウトプットしカタチにしていくことで答えをみつけることができるのだ。コーチは、望むお店を一言で表現したイメージを社員から聞き出し、最後にもう一度具体的な策をまとめさせた。この場合は「お客様に支持され、営業成績ナンバーワンになる」ということになる。

 以上のやり取りは、文章の関係上ごく簡潔に要約したものだが、コーチは一人では見えないものを発見させてくれる上、自分の中にあった答えを導いてくれる存在である。実際、多くのシュチュエーションで活用できるのだ。ぜひ、さまざまな場面で役立てていきたいものである。

 本連載では、今後コーチングの裏も表も包み隠さず紹介していく予定である。あなたの人生のピンチを乗り切るための糧として役立てていただければと思う。

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