オープンソースビジネスは枯れてまた咲く「行く年来る年2006」ITmediaエンタープライズ版(2/2 ページ)

» 2006年12月28日 07時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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あり得ないとまで言われた提携が現実に、その背景には

 一方、Oracleの発表に肝を冷やしたのはRed Hatだけではなく、Microsoftも挙げられよう。この件に対するMicrosoftの具体的なアクションはまだ見えてこないが、その代わりに同社は今年のオープンソース動向を語る上でもっとも重要なアクションを起こした。20年来のライバルであるNovellと「歴史的」提携を発表したのだ。Microsoftのスティーブ・バルマーCEOはこの提携を「新しいモデルであり、両社関係の真の進化」とコメントするなど、こちらも大きな変化を感じさせる。提携の内容は広義に及ぶが、ここでは技術面に着目してみたい。

 技術面では、両社は共同で研究施設を設立し、WindowsとLinuxの相互運用を可能にするソリューションの開発やテストを行う。仮想化、その管理のためのWebサービス、文書フォーマットの互換性の3点に重点を置くという。「相互運用の部分が注目されがちだが、真のポイントは仮想化」と話すのは、Novellアジア太平洋地域アライアンス担当副社長の平野正信氏だ(同氏へのインタビューは近日公開予定)。

 「仮想化を躊躇する企業に明日はない」でも触れられているが、昨今のハードウェア、特にCPUはIntelでいうVT(Virtualization Technology)、AMDでいうAMD-Vのように仮想化の利用を想定したアーキテクチャが出現したことで、ようやく普及に向けた基盤が整いつつある。そんな中、仮想マシンモニタ「Xen」への注目も必然的に高まってきている。

 エンタープライズ市場のハイエンドな部分──例えばデータセンター──では仮想化導入の動きが活性化していくことはほぼ間違いなく、そこで十分な市場シェアを獲得するには、自社が提供するプラットフォームに顧客やベンダーをつなぎとめるだけのデファクトスタンダードを確立することが、戦略上いかに重要であるかをMicrosoftはよく理解している。そのために、Microsoftは4月にVirtual Server無償化を発表した際、Virtual Server 2005 R2仮想マシン上でゲストOSとして稼働するLinuxのサポートを同社のカスタマサービス&サポート部門から提供することも併せて発表し、次いで7月にはXenをベースにした仮想化ソリューションベンダーであるXenSourceと、Xen対応LinuxとWindows Server Virtualizationとの相互接続性を実現する技術開発で提携を発表している。Windows Server Virtualizationは、Windowsサーバの次期バージョンであるLonghornにおける仮想マシン機能で、Longhornの目玉の1つともなっている機能だ。

 ポイントは、ここまでの発表では、仮想マシン上でWindowsが動作することを明言したものではなかったということである。それが、Novellとの提携発表では、共同の研究施設を設立し、仮想マシン上でWindowsを動作させる姿勢を明らかにした。Microsoftのサーバおよびツール事業担当上級副社長を務めるボブ・マグリア氏は、XenSourceとの提携の際、「Microsoftは現在、仮想化ソリューションを主流にするべく取り組んでおり、XenSourceとの提携はその動きを反映したもの」と述べているように、TCOを削減し、相互運用性を実現するために仮想化技術を推進せんとするMicrosoftが、20年来のライバルとでも手を組むというアクションの今後が注目される。

2007年はどうなる?

 ここまで述べてきたように、2007年のエンタープライズ市場におけるLinux/OSSは、サポートと仮想化という観点から、Oracle、Red Hat、Novell、Microsoftといった企業の動向は見逃せない。国内に限定した話をするなら、OracleがRed Hatのサポートを行うのであれば、そのときミラクル・リナックスはどのようなポジショニングとなるのかが注目されよう。日本オラクルでシステム製品統括本部長を務める三澤智光氏は、「中小規模システムで実績を重ねているMiracle Linuxとすでに住み分けはできている。競合することはない」と話している(関連記事参照)が、その詳細については年明けにも発表される予定となっている。

 そして、最近はあまり表立って大きな発表をしていないIBMにも注目である。同社がこれまでに行ってきたLinuxビジネスへの投資は莫大な額である。同社に在籍するLinux開発エンジニアの数から見てもそれは明らかだ。IBMがOracleのように独自のサポートを発表するのか、それとも新たな戦略で臨むのだろうか。

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