仮想化を躊躇する企業に明日はない「行く年来る年2006」ITmediaエンタープライズ版(1/2 ページ)

メインフレーム時代からあった技術だが、2006年ほど「仮想化技術」が脚光を浴びた年はなかった。ハードウェアとソフトウェアの緊密な結びつきを解き放ち、システムに柔軟さをもたらす「仮想化」、そして「アプリケーションの仮想化」ともいえる「SOA」は次のフロンティアだ。

» 2006年12月25日 07時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「CIOの86%がサーバ統合に着手している。仮想化は自然の流れだ」── 2006年5月、McKinseyがとりまとめた調査はこう結論づけている。

 IT産業を牽引するシリコン技術は絶え間のない進化を遂げている。ムーアの法則によれば、トランジスタの集積密度が18カ月から24カ月で2倍になり、それだけプロセッサの処理能力は高まる。11月にIntelが投入した「Intel クアッドコアXeon 5300番台」(コードネーム:Clovertown)は、1つのパッケージにデュアルコア構成のダイを2つ載せることでコアを4つに増やし、性能をデュアルコアXeon 5100番台のさらに1.5倍に引き上げている。昨年まで主流だったシングルコアのXeonと比較すると、短期間で実に4.5倍まで性能向上を図ったことになる。

Clovertownを発表するインテルの吉田和正共同社長

 しかし、サーバの平均的な使用率に目を転じてみると、ウインテルサーバが10%未満、UNIXサーバでも約15%にすぎない。伝統的なシステム構築では、ピーク時の負荷に合わせて余裕のあるサーバをシステムごとに購入する。これでは大半のリソースが遊んでしまうのだ。

 「仮想化技術を活用し、サーバのリソースを使い回せば、本来システムが持っている能力をフルに引き出すことができる」と話すのは、IBM System pのマーケティングを統括するカール・フロイント副社長。IBMは10月中旬、雨季が空けたばかりのタイ・プーケットで年次ユーザーカンファレンスを開催し、同社が常に業界をリードし続けてきた仮想化技術にスポットライトを当てた。

仮想化こそ次のフロンティア

 IBMは1967年、ハイパーバイザーを開発、同社の仮想化技術は以来40年の歴史がある。1973年に物理分割(PPAR)をサポートした最初のマシンを投入、1987年にはメインフレーム上で論理分割(LPAR)もサポートした。フロイント氏が担当するSystem pでも、2001年にPower4プロセッサのシステムでLPARをサポートし、現在のPower5+プロセッサとAIX 5Lの組み合わせでは、「マイクロ・パーティショニング」も実現している。1つの物理的なプロセッサを最大10の論理区画に分割し、負荷に応じてアプリケーションに対してCPU資源を0.1単位で動的に割り振ることができるという。

 「仮想化がさまざまな領域でIT支出の抑制に効果があることに多くの顧客が気づいている。仮想化こそ次のフロンティアであり、市場はこの変化を受け入れ始めている」とフロイント氏は話した。

 仮想化は、8月初め、IBMが猛暑のニューヨークで発表した「Cool Blue」構想の一環でもある。仮想化技術によってCPUの使用効率を高めることができれば、それによって負荷がなくなったCPUはパワーオフしてしまえばいいからだ。

 一方、オープンなx86サーバ向けの仮想化ソフトウェア「VMware」を提供してきたヴイエムウェアの三木泰雄社長は、仮想化の本質的な恩恵は、「ハードウェアとソフトウェアのライフサイクルをそれぞれ別個に管理できることだ」と話す。

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