2007年は買収と合併の年になる? 米セキュリティアナリストの予想

思いもよらぬ買収と合併劇がすでにカウントダウンされているかもしれない。2007年は、2006年以上に驚きの出来事が控えているというのがアナリストの予想だ。そして、ベンダーの具体名も挙げられているが、いかに。

» 2006年12月28日 08時52分 公開
[Matt Hines,eWEEK]
eWEEK

 米国のセキュリティソフトウェア市場のアナリストらは、遅くとも2005年頃から同市場における大規模な整理統合の必要性を説いてきた。そして、一部の業界観測筋によると、2007年はその傾向がついに本格化する年になるかもしれないという。

 今年のセキュリティ業界では、EMCがマサチューセッツ州ベッドフォードのRSA Securityを21億ドルで買収したり、IBMがInternet Security Systems(ISS)を13億ドルで買収したりするなど、大手企業同士の合併が何件か見られたが、さまざまな要因からアプリケーション市場にかかるプレッシャーが大きくなり、向こう12カ月間はさらに多くの買収が行われるだろうと、専門家は予測している。

 ワシントン州レドモンドに本拠を置くMicrosoftは、スタンドアロン製品と、新たにリリースした「Vista」オペレーティングシステムの一機能という2つの形態で、複数のセキュリティ技術を市場に投入した。これに加え、大手セキュリティソフトウェア企業がみずからの製品ラインを多様化させて、セキュリティ市場の比較的新しい分野に進出する機会を狙い始めたことから、2007年は今年以上に企業買収が活発化するというのだ。

 Enterprise Strategy Groupのアナリスト、ジョン・オルシック氏は、「大手企業は自社のポートフォリオを拡充し、企業向けセキュリティ技術をあらゆる対象に提供することを目指すようになっている」と説明する。

 「そのためには、買収候補になり得るセキュリティ企業を入念に選別し、ベンチャー投資を得ている新興企業から専門家を獲得していかねばならない。以前からセキュリティを専業としている企業ばかりでなく、RSAを取得したEMCのような大手IT企業も、一定のセキュリティ専門知識が必要になる大企業との契約を勝ち取るため、そうした戦略を進めていくだろう」(オルシック氏)

 さらにオルシック氏は、2007年に多くなると考えられるタイプの契約の一例として、Check Point Software Technologies(カリフォルニア州レッドウッドショア)による暗号化専門企業Pointsec Mobile Technologies(イリノイ州ライル)の買収を挙げている。Check Pointは11月中旬に、Pointsecを5億8600万ドルで取得した。

 ネットワークセキュリティアプリケーションを提供しているCheck Pointなどの中規模企業は、顧客から多機能化を求められていることもあって、みずからの製品にさらなるセールスポイントを付け足してくれるような買収候補を物色していくだろうと、アナリストは分析している。

 ほかの専門家も、2007年には今年以上に合併および買収が活発化するが、その結果、セキュリティアプリケーション産業自体が縮小してしまうとは限らないという見方に、同意を示している。Gartnerのアナリストであるジョン・ペスカトーレ氏は、大手企業は引き続き小規模な専門会社を吸収し、合併によって手を広げる中規模ベンダーもさらに増えると思われるが、それでも同市場に新規参入するセキュリティ新興企業の数が減ることはないと話した。

 「一方で合併がまとまれば、他方でベンチャー資本の支援を受けた新興企業が生まれ、新種のセキュリティ脅威や市場ニーズに対応しようとするだろう。これからは、RSA買収に代表される、非セキュリティ企業がセキュリティ技術に出資するケースや、大手セキュリティ企業が非セキュリティ企業を買収してビジネスモデルを拡張するケースが増えていくと思われる。後者の例としては、SymantecがVeritasを併合してストレージ分野に進出したことなどが記憶に新しい」(ペスカトーレ氏)

 中堅セキュリティアプリケーションメーカーの幹部は、エンタープライズ分野で大企業と競合するのがより難しくなっていることは意識していながらも、大多数の企業IT管理者が取り引きするベンダーの数を減らしたいと考え、Vistaの導入にかかるコストをセキュリティ製品の低価格化を望むことで取り返そうとする傾向が加速している昨今、買収されることだけが生き残るための唯一の道だとは思わないと述べている。

 今年1月、ウイルス対策ソフトウェア企業Sophos(英国オックスフォード)の最高経営責任者(CEO)に就任したスティーブ・マンフォールド氏は、小規模なセキュリティ企業は提携を通して一致団結し、各々のセキュリティアプリケーションを統合するようになるだろうと指摘した。Sophos自身も株式を上場して資金を集め、さらに力を蓄えて、マーケットリーダーであるSymantecやMcAfeeに対抗していく意向だという。

 Sophosをはじめ、F-SecureやKaspersky Labs、Panda Softwareといった中堅どころの企業は、IBMやOracleなどの大手ITインフラストラクチャベンダーから格好の買収相手として目されているが、マンフォールド氏はSophosを売却するつもりはないと明言した。

 「インフラプロバイダーにとって、セキュリティの重要性は今後ますます大きくなるはずだ。セキュリティ面を補うための買収も増えるだろうが、その場合、純粋な企業向けセキュリティベンダーが減少することになるので、われわれのような企業から見ればこれはチャンスなのである。たかだか1億5000万ドル規模のウイルス対策企業が大勝利を収める公算が低いことは分かっているが、吸収合併されるほかにも選択肢はある。例えば当社では、新規株式公開を検討している」(マンフォールド氏)

 ジョージア州アトランタに拠点を置くISSのCEOであり、共同創立者でもあるトム・ヌーナン氏は、同社のIBMへの売却を先頭に立って進めた人物だ。両社が取り引きをするのではという噂は、公式発表の数カ月前から人々の口に上っていた。大手ITプロバイダーが、既存の製品およびサービスにセキュリティ機能を追加しようと模索している現状を鑑みるに、2007年に行われる大規模な買収のほとんどが、ISSとIBMの契約とよく似たタイプのものになるだろうと、ヌーナン氏は述べている。

 「このご時世に、セキュリティにはあまり力を入れていない、セキュリティに関する専門知識もないなどと顧客に告げられるITベンダーは存在しない。当の顧客はといえば、ITインフラはよりシンプルに、取り引きをするベンダーの数はより少なく、と望んでいる。大手プロバイダーの広範なソリューションを検討する際は、セキュリティが導入決定の最大の決め手になりつつある」(ヌーナン氏)

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.

注目のテーマ