“コミュニケーションネック社員”の存在をチェックする失敗プロジェクトが常態化する開発現場(後編)(1/2 ページ)

情報連携における最も大きな問題点は、重要な情報の流れを阻害する“コミュニケーションネック社員”の存在である。彼らの行動様式が、どのようにプロジェクトに影響しているかを確認することも重要である。

» 2007年02月15日 07時00分 公開
[瀬良征志(ブーズ・アレン・ハミルトン シニア・アソシエイト),アイティセレクト編集部]

 昨今のロジカルシンキングブームにより市販の書籍も多く出回り、誰でも基本的な論理構成を身につける環境は整ってきた。

 実際のビジネスの現場における問題解決では「問題の解き方」よりも「問題の定義」の方が重要であることが多いのだが、これが意外と難しい。数々の“問題かもしれない”事象の中から「解決すべき本質的な課題」を明確にするには、スキル、経験とある種のセンスが求められる。

“お手本となる社員”をメンバーに加える

 「うちの会社には○○がない(例:戦略)のが問題」との問題定義のもと「○○をいかに作るべきか」の議論を延々と続けているのをよく見かけるが、多くの場合「○○がない」こと自体は問題ではなく、本当の問題点は別のところにあったりする。この場合、議論にあてた時間は無駄である。これらの無駄の積み重ねが、プロジェクトの失敗につながる、といっても過言ではない。

 では、直面するプロジェクトで短期的な問題解決スキル向上に取り組むにはどうすべきか。まずは、どの企業にも何人かはいる“お手本となる社員”をメンバーに加えることが第一歩。そして、立ち上げの段階から、できるだけ多くの有望な人材をお手本社員の周りに集中配置する。

 さらに前述の市販の書籍を用いた勉強会や実務上の反省会といった改善活動を地道に続けていくことで、勘所の良い人材は育っていく。この手のスキル・経験が豊富なコンサルタントとの共同作業も有効な手段の一つである。

 経験上、必ずクライアントメンバーの中の何人かはプロジェクトの序盤でコンサルタントの仕事の仕方から問題解決スキル・センスを“盗み”、プロジェクト終盤に渡るまで活躍し続けていくことになる。

 問題解決活動にはインプットとなる情報が不可欠である。十分な情報がなければ、仮説や前提だらけの非効率な問題解決とならざるを得ない。情報を流通させる仕組みは定例会議やメール連絡等の通常のものでよい。しかしこれらを満足のいくクオリティで運営しようとすると、意外と難しい。

 よく「無駄な会議」という言葉を聞くが、多くの場合は運営が拙いことによって「無駄にしている」に過ぎない。会議の目的設定、資料の準備、メンバーの選定、アジェンダの設計等、会議自体の質を高める施策に丁寧に一つひとつ取り組むことで、その品質は驚くほど向上する。

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