この夏、北海道大学大学院が世界に挑む――Imagine Cup日本代表が決定

マイクロソフトが3月25日に大阪で開催した「The Student Day 2007」で、北海道大学大学院修士1年4名による「Team Someday」がソフトウェアデザイン部門の日本代表に選出、この夏韓国で開催されるImagine Cupへの出場権を得た。

» 2007年03月26日 12時49分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 「学生は知らず知らずのうちにいろいろな壁を作ってしまう。それに立ち向かういい機会となった」――マイクロソフトが3月25日に大阪で開催した「The Student Day 2007」の1コマだ。

 The Student Dayは、マイクロソフトがITやプログラミングに興味をもつ学生を対象に、学生の持つ可能性を引き出すためのイベントとして、2004年以降毎年この時期に開催されるもの。過去3回は関東で開催してきたが、今回初めて関西圏での開催となった。

 同イベントで特筆すべきは、世界の学生を対象としたマイクロソフト主催の世界規模のIT技術コンテスト「The Imagine Cup」のうち、ソフトウェアデザイン部門の日本代表を決定する国内最終予選会も兼ねているということだ。今年は8月に韓国で開催される予定のImagine Cupだが、昨年の世界大会でベスト6入賞を成し遂げた日本代表チームの中核的存在だった中山浩太郎さんや前川卓也さんはすでに卒業していることもあり、どのチームが世界への切符を手にするのか興味深いものとなった。

 国内最終予選会の前には、中山浩太郎さんがゲストとして登場、「世界の壁を感じ、手が届かないと感じてしまうかもしれない。事実、海外のチームのプレゼンテーションのスキルは高い。しかし、いろいろ考えるよりまずは1回チャレンジしてみてほしい。意外と壁が高くないことに気がつくはず」と学生たちに向けてエールを送った。

中山浩太郎さんと、この日司会進行を務めたマイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部戦略企画本部アカデミック情報教育推進部マネージャーの田中達彦氏

 今年のテーマは「テクノロジの活用による、より良い教育の実現に向けて」。事前に予選で選ばれた北海道大学大学院の学生を中心とする「SAPPORO 2丁目」と「Team Someday」、電気通信大学の足立博さんと東京工科大学の岡本道明さんによる「EMET」の3チームは同テーマに沿ったプレゼンテーションを10分間で行った。それぞれのチームの発表内容の詳細は別記事で示すが、それぞれ次の通り。

  • SAPPORO 2丁目:カウンセラー教育支援システム「ラポール」
  • Team Someday:デジタルノートシステム「LinQ」
  • EMET:生徒同士の教えあい促進システム「Teaching Mileage」

 プレゼンテーションでも3者3様で、ジャパネットたかたを模した寸劇風にアレンジするチーム、慣れないプレゼンテーションで思いように進行できず、焦ってしまうチーム、大観衆を目の前にしてあがってしまうチームなど、それぞれの10分間を過ごした。

プレゼンテーションの1コマ。これはSAPPORO 2丁目。左側の方は自信はありませんがおそらく男性です

いつか夢見た地へ

 結果から先に報告すると、「Team Someday」チームが今回の日本代表としてThe Imagine Cup 2007に参加することになった。同チームはプレゼンテーションの内容もそつなくまとまっており、かつ、落ち着いた進行で十分な余裕を持ったプレゼンテーションを行ったが、審査員の言を借りれば、それぞれの考えた内容のベクトルを少し変えるだけで、どのチームが代表となってもおかしくない内容であった。審査員の一人、NHKエンタープライズ開発センターデジタル政策副部長の菊江賢治氏は、「それぞれの審査員で意見が分かれたが、今後の可能性の高さからTeam Somedayを代表とした。Imagine Cupでは世界の標準にいかに合わせられるかが課題となる。ノートを取るという文化が普遍的なものかも含め、ブラッシュアップしていく必要があるし、実際の現場で検証することも大事な要素となる。本番までにより優れたものにして頑張ってほしい」と述べた。

優勝したTeam Someday。これまでのどのチームよりも優れているのではないかと思うほどチームワークの良さを感じさせる。現在修士1年の彼らは就職活動や学業と平行しながら今回のStudent Dayに向けた準備をしてきたが、Team Somedayのリーダー、下田修さん(写真右奥)は「それこそいっしょに研究室に雑魚寝して朝就職活動にいくような感じ」と楽しげに振り返る。なお、この日、参加者を対象に、Xbox 360や1GバイトUSBメモリが当たる抽選会が開催されたが、Team Somedayの丸山加奈さん(写真中央)もUSBメモリが当たり、ダブルでの喜びをかみしめていた

 イベント終了後に行われた記者会見において、昨年の世界大会に同行したマイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部戦略企画本部本部長の冨沢高明氏も、「中山さんたちのチームは、(中山さんが過去数回参加したことで得た)経験から、世界大会を見越した視点でのプレゼンテーションを意識していた。具体的には、実証実験による現場の声を反映したり、それに掛かるコストの試算を算出したりといったようなこと。今回、まだまだ日本の物差しで考えてしまっている部分があるため、これを今後、ブラッシュアップして世界大会で頑張ってほしい」と世界大会に向けた姿勢を説いた。

 なお、イベント終了後、会場にいた中山さんにTeam Somedayの印象を聞くと、「プレゼンテーションもよくまとまっていたと思う。チームワークを何より大事にして頑張ってほしい」と話した。また、昨年中山さんとともに世界大会に参加し、この日はユビキタス最前線と題したセッションを行ったNTTコミュニケーション科学基礎研究所社会インタラクション研究グループの前川卓也さんも「アピールするというのは人を説得するに当たって大きな要素なので、とにかく目立つことを考えてほしい」と世界を経験した二人ならではのコメントを寄せた。

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