Imagine Cup 2006のソフトウェアデザイン部門はイタリアが制した。今大会を終えて見えてきたImagine Cupにおける勝利の方程式について考えてみよう。
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大会の最後を飾るクロージングセッション。各部門の結果についてはいち早くこちらの記事でお伝えしたが、ソフトウェアデザイン部門で優勝の期待が掛かっていた日本代表チームは残念ながら3位以内の入賞とはならなかった。
また、そのほかの部門ではアルゴリズム部門でポーランドが1位から3位を独占したほか、フランスが幾つかの部門で入賞するなど、各国の力の入れている部門が透けて見えるようだ。
今回、ファイナリスト6名の誰しもが日本代表チームの優勝、もしくは3位までには入るだろうという見方が大半を占めていた中(ブラジルチームのメンバーですら日本代表チームが3位以内に入らなかったことが不思議だと話していた)、このような結果に終わったのはなぜか? ソフトウェアデザイン部門で入賞した3チームに共通点を見いだすことは難しいが、幾つか推測することはできる。
「健康」という今回のテーマに基づく各チームの発表は、「健康な人の生活をより健康的に」しようと試みるものと、「障害を持つ人たちの生活を豊かなものに」しようとするものに大別できる。ここからさらに、生活全般をどう変えるかというマクロな視点でとらえたものと、医療現場などで働く人の視点に立つなど、比較的ミクロな視点でとらえたものに分けられる。それぞれ横軸、縦軸と定めるとマトリックスが出来上がるわけだ。
今回のソフトウェアデザイン部門でファイナリストとなった6チームをこれに従って区分してみると、イタリア、中国は健常者の生活全般を、ブラジルは障害を持つ人の生活全般をどう変えるかといった発想に立つものだった。ノルウェー、デンマーク、そして日本は、医療にフォーカスしたものであった。そして、3位までに入賞したチームはいずれも縦横軸のいずれかがマクロに寄ったものであった。
結果から推測するに、特定分野向けのポイントソリューションよりは、広く浅いソリューションが審査員には支持されたように思える。その上で、ビジネスモデルが確立されているかどうかもある程度考慮されていたようだ。ブラジル、ノルウェーなどはビジネスモデルをしっかりとプレゼンテーションの中で説明し、必要なハードウェアなどの単価も算出、そこから収益モデルも導き出している。また、デンマークも実際に医療現場で使用してもらうなどしていた。一方、日本も使用感もふまえた現場のヒアリングは行っているが、そこからさらに一歩踏み込んだものが求められていたのかもしれない。
ところで、クロージングセッションには、先日訪問したMicrosoft Reserch Indiaでデモを披露してくれたSean Blagsvedt氏も出席していた。ファイナリスト6チームが発表を終えた後、最先端の研究を行う彼に日本代表チームの印象について聞くと、「盆栽の文化とでも言うのだろうか。小さなデバイスを活用し、最新のテクノロジーをそこに融合させた発表内容は単純にすばらしい。1年以内の実用化も夢ではないと思う」と日本代表チームを絶賛していた。一方で、優勝したイタリア代表チームについては、同じくすばらしいとはしながらも、「実用化にはもう少し掛かるのではないか」と述べている。
審査員との相性、と言ってしまえばそれまでだが、会場で話を聞いた多くの人が日本代表チームのプレゼンテーションを高く評価していたことから考えても、決してそのアイデアが劣っていたとは言えないように思う。
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