イタリア、ワールドカップに続いて世界を制す――見えた勝利の方程式Imagine Cup 2006 日本代表追っかけルポ(2/2 ページ)

» 2006年08月22日 08時47分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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英語、そしてコミュニティー

 とはいえ、日本チームが来年以降さらに上位を目指すなら、上述したポイントを押さえるとともに、やはり英語の問題は挙げておくべきだろう。

 英語の問題と言っても、ネイティブのように流ちょうに話す必要はまったくない。しかし、審査員から寄せられる質問に対して的を外すことなく返答する必要はある。今回、日本代表チームは中山さんを中心にプレゼンテーション自体はそつなくこなせていた。しかし、質問の際、審査員の投げかける質問の意図するところが十分に理解できず、かみ合わないところがあった。中国代表チームも同様に、質問時に何度も聞き直すなどこの部分で大きくつまづいた感がある。

 また、これは学生の問題というより、むしろ周辺の要因となるが、国内におけるコミュニティーが極めて希薄であることも問題として挙げられる。

 今回、ある審査員は、「日本代表チームにはミスらしいミスはなかった。来年以降のために、こうした発表のスキルなどを蓄積する必要があるのではないか」と語った。資産となりうるナレッジを蓄積する場が実質的に存在しないことは不幸であると言わざるを得ない。

 確かにMicrosoftもプログラミングやパソコンを活用する全世界の学生に向けたコミュニティーサイトとして「theSpoke」を立ち上げているが、日本においてここが十分に機能しているかと問われれば、現時点では間違いなく不十分である。参加しているメンバーも固定されがちで、刺激を受ける機会が少なく、成長が鈍化してしまいかねない。過去のナレッジを蓄積し、コミュニティーを活性化する施策を進める必要があるように思う。

来年は韓国、テーマは「教育」

 ほとんど手探り状態であった初期のころと比べると、進行なども洗練された印象を受ける今回のImagine Cup。

 しかし、少々残念に思うこともあった。今回、ソフトウェアデザイン部門の入賞チームに、中国、ドイツ、クロアチアを加えた6チームは、その発表内容を市場に送り出すべくMicrosoftとBTによる共同スポンサーで企画された「Imagine Cup Innovation Accelerator program」に選ばれた。

 これまで、同大会はいわゆる学生の青田買いではないかという声もあったが、日本に限って見てみると、第1回のImagine Cupで日本代表として参加したチームのメンバーは、ほかのハードウェアベンダーに就職しているし、その後の参加者もマイクロソフトに入社したという話は寡聞にして知らない。純粋な学生のための技術コンテストとしての存在が、今回のこうした施策により揺らぎかねないという懸念もある。同大会のスポンサーとして企業が参加する動機にもなるであろうが、そうした行為の行き着く先はそう明るくないように感じた。

 しかし、学生たちにとっては、そんな周囲の思いに流されることなく、純粋にプログラムを楽しんでほしいところだ。実際、中山さんを例に挙げると、過去3度のImagine Cupで日本代表として参加した彼は、人間的に非常に成長したように感じる。本人も、「やれることはすべて出し尽くしたので悔いはありません」と話すなど、完全燃焼した様子だった。ここでの経験を基に、新たな挑戦を続けるのだろう。

 一方、ビジュアルゲーミング部門に参加した.PGチームも、鈴木さんが「正直なところ、準備不足は否めなかった。来年は大居さんと組んでチャレンジしたい」と話せば、竹井さんも、「またソフトウェアデザイン部門でエントリーしたい」と早くも来年に向けた決意を語った。

 今回の結果を評して「ローマは一日にしてならずですよ」と話すのは、マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部アカデミック情報教育推進部部長の冨沢高明氏。今回の結果は、Imagine Cupで日本代表が優勝するという壮大なドラマの途中に挟まれた、ちょっとした予告編の上映に過ぎないのかもしれない。しかし、予告編の後には本編がやってくる。それは遠い未来ではなく、あるいはすでに始まりつつあると言っても過言ではない。来年は韓国で行われる同大会のテーマは「教育」、そこではどのようなドラマが繰り広げられようとしているのだろうか。

会場の壁に書き込まれていた「Hello World」の文字。ここからすべてがはじまるのだ

今回のImagine Cupにおける日本代表チームの戦いの軌跡は夢工房でもお届けする予定です。



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