最終回 ポケベルが残したもの緊急特集「さらばポケベル」(2/2 ページ)

» 2007年03月30日 07時30分 公開
[村田嘉利,ITmedia]
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ポケベルと未来の移動体通信

 システムとして見ると、ポケベルはケータイに飲み込まれた形だ。一方で、文化的には「ベル友」に引き続いて、非常に語感が類似した「メル友」という言葉が生まれた。

 このように「ベル友」は「メル友」に引き継がれて、若者を中心に利用され続けた。しかしながらケータイのメッセージングは、NTTドコモの「iモード」を始めとするIPベースのインターネットメールを採用したことによって、幅広いユーザーに利用されるサービスへと変質した。

 モバイルコンピューティングやインターネットとポケベルの連携については、さまざまな取り組みが行われてきた。しかし、ケータイにしてもポケベルにしても、それぞれの特性をよく理解をしているユーザーだけがモバイルコンピューティングと連携させるために導入している。一般のユーザーがこれらをモバイルコンピューティングに導入することは稀だろう。

 iモードやKDDIの「EZweb」のように、携帯電話端末だけで利用できる以外のサービスは、一般のユーザーの間に普及する可能性が非常に低かったと考えられる。1-wayシステムのポケベルで、そのような高度なサービスを実現するのは、非常に困難だということを考えるれば、残念ながらポケベルを利用したモバイルコンピューティングの市場は、ほとんど無かったといえる。

 さて、「ポケベルからケータイへ」のパラダイムシフトをいくつかの観点から見てきたが、「ケータイの今後」がどのようになるかという点について、最後に少し考えてみたい。

移動体通信の発展 移動体通信システムの発展と未来像

 ケータイには、ポケベルのような1-way通信という弱点が存在しない。ただし、最新の携帯電話システムとなる「3Gシステム」(第三世代携帯電話)は、技術者が日々努力をしているが、安価な利用料金で、いつでもどこでも、どのようなデータでも送受信できるという水準のサービスには至っていない。

 1つの無線システムですべてのユーザーニーズに対応すること自体が、無理なのかも知れない。そのため、将来の移動体通信を研究している多くの研究者が「コグニティブ無線」とか「ヘテロジーニアスネットワーク」などと呼ばれる、複数の無線システムを柔軟に使い分ける仕組みによって、ユーザーニーズに応えていくべきだとの考えを持っている。

 そのようなアーキテクチャを持つシステムをも「携帯電話システム」と呼ぶのであれば、今後とも携帯電話システムは存続していくものだろうと考えている。

村田嘉利

岩手県立大学ソフトウェア情報学部教授。1979年〜2006年、NTTおよびNTTドコモにて移動通信技術やコンテンツ、マルチメディアサービスの開発に従事。2006年7月より現職。


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