Debian 4.0はDebianによるDebianの再定義Review(1/2 ページ)

昨今ではDebianからUbuntuに転向する開発者やユーザーも珍しくない。もはやDeibanの存在価値はなくなってしまったのだろうか? 今週リリースされたDebianGNU/Linux 4.0は、そのような問いに対するDebian開発コミュニティーからの回答とも言えるリリースだ。

» 2007年04月19日 08時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 Debianはプロジェクトの開始以来ほぼ常に、非商用で「自由」という信条を持った最大級のディストリビューションだったが、昨今ではDebianからUbuntuに転向する開発者やユーザーも珍しくない。もはやDeibanの存在価値はなくなってしまったのだろうか? 今週リリースされたDebianGNU/Linux 4.0は、そのような問いに対するDebian開発コミュニティーからの回答とも言えるリリースだ。

 Debian 4.0の背後にある哲学は、端的に言えば「初心者にとって非常に簡単になるよう最善を尽くしつつ、上級者のチューニングも妨げない」ということであり、DebianのサブプロジェクトDebian on the Desktopのページにも掲げられている。

 言い換えるとDebianは、使いやすさという点でUbuntuなどのディストリビューションと直接的に張り合おうとするのではなく、異なるアプローチを試みているということだ。つまりDebianでは新たなユーザー層に対応する必要を日増しに強く認識しつつも、フリーソフトウェアの「自分で作る」という伝統的なアプローチも幾らか残すために、ユーザーが望むなら自分のオペレーティングシステムについてより多くを学ぶことができるようにもしている。この方針は、インストーラ、デスクトップ、デフォルトでインストールされるソフトウェア、セキュリティ、パッケージ管理など、Debian 4.0の随所に反映されている。

 上級者と初心者という異なる2つのユーザー層の間でバランスを取ろうとする取り組みは、インストールプログラムにおいて最も顕著に現われている。例えばわたしが使用したネットワークインストール版ではデフォルトとしてGNOMEデスクトップが立ち上がるが、KDEやXfce用のCDイメージも利用可能になっている。同様にインストーラについても、デフォルトはここ数年間Debianで使用されてきた非常に多機能で便利なテキストモードのものだが、CDからの起動時にinstallguiというコマンドを使うとXウインドウシステムなしで直接的にフレームバッファ経由で動く、グラフィック版のインストーラを利用することもできる。また、テキスト版の場合もグラフィック版の場合も、エキスパートモードを利用することができる。なおinstallguiでは、レビュアにはうれしいことに、たいていのウインドウ内にスクリーンショット撮影用のボタンまでもが用意されている。出力されたスクリーンショットは新しくインストールしたシステムの/var/logに保存されている。

 どのタイプのインストーラもUbuntuのインストーラほど簡単ではないが、その見返りとして、Debianのインストーラを使えば、インストールを終えるころにはシステムについての理解をより深めているはずだ。例えば、Debianのインストーラでは以前からワークステーションのドメイン名の入力を求めるなど経験の浅いユーザーが困るような質問も行なっていたが、現在では、やはり同じ質問はするものの、ドメイン名とは何かを説明した明確で簡潔なヘルプとともに「家庭用のネットワークを構築している場合には適当に考えたドメイン名で良いですが、すべてのコンピュータ上で同じドメイン名を使用するようにしてください」という説明も添えられるようになった。

 異なる2つのユーザー層の両方に魅力あるインストーラにしようという取り組みが特に顕著に現われているのは、パーティーション分割に関する部分だ。ユーザーは「手動」パーティーション分割を行うか「ガイド」パーティーション分割を行うかを選ぶことができるだけでなく、LVMパーティーションを作成し、さらに暗号化するかどうかまで選ぶことができる。またパーティーション分割方法についてもすべてを単一パーティーションにする方法から、/、/home、/usr、/var、/tmpのすべてを別々のパーティーションにする方法まで、複数の方法から選択できる。またユーザーの希望によっては各パーティーションの大きさやファイルシステムの種類を変更することも可能だ。各選択肢についての説明がもっとあれば初心者にもより役立つようにも思われたが、パーティーション分割に関しては、簡単なデフォルトを提供しつつも、より複雑な選択肢も残してあり、概してよく作り込まれているといって良いだろう。

 エキスパートモードではさらに、ロケールの指定(ISO-8859/レガシー/UTF-8など)、追加のインストーラ用コンポーネントの指定(ダイヤルアップでのインターネット接続など)、使用するカーネルの指定、パッケージレポジトリの指定(non-freeのソフトウェアをインストールするかどうか)などについてのオプションが用意されている。初心者はこのような多くの選択肢の存在によって迷ってしまうこともあるかもしれないが、多くの中級者ユーザーにとっては(特に、あともう少しヘルプが充実していれば)エキスパートモードを使うこと自体が勉強にもなる。

デスクトップのデフォルト

 これまでのDebianのリリースではデスクトップを完全に無視していたわけではないものの、カスタマイズやユーザー体験を向上させるようなことはほとんど行なわれていないことが多かった。Debian 4.0では、(Ubuntuに匹敵するほど洗練されているということはないが、いままでとは打って変わって)デフォルトテーマのdebian-moreblueで全体的に統一されていたり、バランスの取れた設定が選ばれている。

 メニュー項目の選び方やシステム全体に影響するような変更を行なったときにルートパスワードの入力を求めるダイアログウインドウを提示するといったような幾つかの設定は、Debianが行なったというよりはGNOMEからのおこぼれだが、Debianが独自に手を加えた部分もある。例えばより網羅的なメニュー項目を望むユーザーのためにメインメニューにDebianの以前のメニューが含められていたり、メニューをカスタマイズしたいユーザーのために Alacarteメニューエディタが用意されていたりする。

 そのほかの変更としては、MPlayerがインストールされ、Mozillaベースのブラウザ内でビデオを再生することができるようになっているということが挙げられる。ただしDebian 4.0では、幾つかの標準的なビデオ形式の再生を可能にするWin32コーデックは除外されている。また最も顕著な変更の一つとして、これまでのメジャーリリースとは異なりDebian 4.0ではGNOMEのヘルプ文書が含まれるようになったということが挙げられる。これは、GNU Free Documentation License(GFDL)であっても変更不可部分のない文書はフリーでありDebianディストリビューションに含めることができるという、昨年のDebianプロジェクトの投票結果が直接的に反映されたものだ。

 けれどもDebianのデスクトップは、ユーザー体験にさらに注意を向けることでまだ向上する余地があると思われる。例えば、トップパネルにEvolutionのランチャーはあるのにそのほかの標準的なプログラムが含まれていないことなどがある。しかしまだ改善の余地があるとはいえDebian 4.0は正しい方向へ進んだ一歩ではある。

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