まず問題になったのは、問い合わせや要望の情報がきちんと整理されていないことだった。例えば以前宿泊した顧客から再び予約があったとき、「前回は何か特別な要望があったのか」、「あるとしたら何なのか」といった情報は、メーラーでメールを検索しないとわからなかった。
また、予約データの分析に手間がかかることも課題だった。予約情報はフロントシステムのデータベースに蓄積されているが、フロントシステムのレポート機能では、ネット経由の予約だけを取り出して詳細な分析は困難。そのため別のデータベースソフトで分析を行っていたが、フロントシステムとは別に予約データを手作業で入力しなくてはならず、二度手間になっていた。
そこで、作業の効率化を図るため、02年からCRMサービスの導入を検討。最終的に選んだのは、Salesforceだった。ネットセールス課課長代理の寺西裕之氏は、その理由をこう明かす。
「ネットセールスの予算の都合上、初期費用がかからず低コストで導入できるASPであることが絶対条件でした。なかでも『Salesforce』は、資料請求後にすぐに連絡をいただき、その対応にも好感が持てました」
まず02年秋に1アカウントを試験的に導入。問い合わせには「ケース管理」、レストラン予約には「リード管理」の機能が活用できることを確認し、03年1月には3ユーザーで本格稼動に至っている。
今回の導入で、問い合わせや要望への対応は大幅に効率化された。ウェブ経由で届いた問い合わせはSalesforceに自動的に蓄積。履歴も簡単に把握できるので、例えば前回、エキストラベットを利用した顧客に対して、「今回もご用意いたしましょうか?」というように、スピーディに返信できるようになった。
また、返信メールの正確さも増した。以前は返信メールを書くとき、過去の返信メールの中から相応しいものを選び、それを雛形にして作成することが多かった。そのため返信前に、顧客の名前や日時に間違いがないかをチェックする必要があったが、現在はSalesforceが顧客情報が事前に入った雛形を作成してくれるため、確認の手間がかからない。
「これらの効率化によって、問い合わせやレストラン予約の内容を読んでから返信するまでの作業時間は、約半分に短縮。質の高い対応を迅速に行えるようになったことで、お客様からも喜ばれています」と寺西氏。
さらに06年にはインターネット予約システムを刷新。それを機にSalesforceを連携させて、自社サイトからの予約情報がCRMのデータベースに直接入り込む形に変更。予約情報はフロントシステムに入力するだけでよくなり、二重入力の無駄もなくなった。
ちなみに昨年には、飲料などの他の部門にもSalesforceを導入。現在は部門ごとに個別に活用しているが、今後はデータベースを一元化して顧客情報の共有を進めていく考えだという。
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