機能不全システムを蘇生せよ!――内部統制対応も視野に入れたERP導入アイティセレクト特選事例(1/2 ページ)

ERPと関連のシステムによって、自社製品のコスト管理を厳密に行うというのは、もはや「進んだ会社」だけが挑戦する目標ではない。財務状況を監査する側から当然のごとく求められるようになったからだ。量産製品ではなく、一品生産に近いモノづくりを事業とする企業の取り組みを取材した。

» 2007年05月29日 12時02分 公開
[大西高弘,アイティセレクト編集部]

導入前の課題

2年前に稼働させた販売・生産システムが業務になじまず、不具合が多発していた。バグやデータ修正が進まず、監査法人などから基幹システムとして不適格との指摘を受けていた。


導入後の効果

全社体制でプロジェクトチームを組み、6カ月で稼働させることができた。不具合の発生もほとんどなく、順調に稼働している。また経営や業務改善に役立つ情報を効率的に抽出する仕組みが整った。


 1948年創業のカイジョーは半導体組み立てシステム事業、半導体精密洗浄システム事業、超音波エネルギー応用事業の3つの事業を柱としている。ICチップなどを生産する企業にとって欠かせないワイヤーボンダー装置やシリコンウェハー、液晶などを洗浄する装置など、先進的な装置を開発し、顧客であるメーカーを支え続けている。これらの製品は顧客企業の要求に合わせた仕様で製品作りをすることがほとんどで、いわゆるオーダーメイドに近い。国内企業はもとより海外企業との取り引きも盛んに行っている同社だが、競合企業は少なく、安定した経営を続けている。

 オーダーメイドに近いモノづくりになるのは、製品の機能は類似していても、各顧客企業の製品に対する要求がそれぞれ違うからである。工場など設置場所によってサイズを変更することもあるし、顧客サイドの生産ラインによって仕様も変更要請がくる。

 一品生産には量産型とは違うコスト管理が必要だ。顧客の要求が最優先され、カスタマイズ要件が増えることもあり、しっかりと管理しないとコストがあちこちで膨らんでしまう。

不具合の多発に運用で対応する日々

 もちろん、カイジョーでもコスト管理が甘くならないよう、生産管理システムを構築し、長年運用していた。第一世代のシステムのサポートが切れる前に、二世代目のシステムを準備し2004年度から運用を開始。

 パッケージを利用したシステムだった。しかし、このシステムは運用当初から問題が多発してしまっていた。

 「パッケージそのものの問題もありましたし、カスタマイズした部分での不具合があちこちで発生して機能不全に陥っていました。量産タイプの生産ラインに向いているソフトを導入し、当社の一品生産の業務に合わせてカスタマイズしたものなのですが、いくら修正をしても後から別の不具合が発生するという状態でした」と語るのは、情報システム部部長の宮崎浩之氏。

 会計や人事は別のシステムを構築していたので、日常の業務のすべてに支障が出るということはなかったが、生産、販売業務においては、どうにか動かせる運用方法を編み出して使っていた。

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