WiMAXはムーアの法則で進化する?(2/2 ページ)

» 2007年06月01日 21時25分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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周波数再編は競争がカギ

 Intelコーポレート・テクノロジー統括本部通信/技術政策・標準化担当ディレクターのピータ・ピッチ氏は、電波周波数の再編を上手く実現するための施策を紹介した。

ピーター・ピッチディレクター

 ピッチ氏自身は、1980年代に米連邦通信委員会(FCC)で電波周波数の割り当てなどに携わった経験を持つ。多くの先進国は、WiMAXのような新しい無線サービスに割り当てるための電波周波数の帯域が不足しており、各国が周波数再編に取り組んでいる。ピッチ氏は、この課題を解決に「免許不要な帯域」と「免許が必要な帯域」の事例が大きなヒントになると話した。

 ピッチ氏によれば、「免許不要な帯域」の実例では2.4GHz帯のWiFiが参考になるという。「行政機関が深く関与しなかったことで、2.4GHzでは民間企業を中心にさまざまなサービスが開発された。今や世界的なネットワークになったのはご存知のことだろう」とピッチ氏。一方「免許が必要な帯域」の事例では、テレビ放送用に割り当てられていた空きチャンネルを利用するメディアサービスを紹介した。

隣接チャンネルとの混信を避けるために用意されている空きチャンネルを利用して無線通信サービスを提供した

 これらの例からピッチ氏は、近距離間で数百Mbpsの通信が行える免許不要な「UWB」(Ultra Wide Band)の利用や、免許が必要な帯域では周波数の弾力的な運用が必要だと話す。米国では携帯電話向け2.5GHz帯を活用することで、米Sprintが2年間で約20億ドルを投資して6000万〜8000万ユーザーを対象にモバイルWiMAXサービスを提供する取り組みを始めている。

 実際の電波再編においては、既存事業者と新規事業者の双方にメリットのある展開が大切だとピッチ氏は話す。米国のデジタル放送化では、オークション方式を導入したことで新規事業者の参入を促がすと同時に、落札額の10%をデジタル化に必要な資金として利用するよう規定された。この資金はアナログテレビ受信機を持つ視聴者に提供するアダプター装置の代金などに利用されているという。

 ピッチ氏は、「電波行政は監督官庁がすべてを指揮するのではなく、柔軟性を新しい施策を試みる積極性が大事だ」と締めくくった。

商用化のせまるWiMAX

 WiMAXフォーラム代表兼会長のロン・レズニック氏は、「WiMAXが携帯電話に代わって音声サービスを提供するものだといまだに誤解している事業者がいる。WiMAXは携帯電話データ通信の補完と固定通信事業者を含めた新しい競争を生み出すものだ」と述べ、WiMAXに対する正しい理解を求めた。

ロン・レズニックWiMAXフォーラム代表兼会長

 WiMAXフォーラムには、通信事業者や機器メーカーを中心に世界の企業約400社が参加し、日本からは5月15日現在で30社が参加している。レズニック氏は、国際的な企業の共同体制によって特定の企業だけが利益を享受する体制ではないことを強調し、「WiMAXはオープンな環境下で企業が競争し、ユーザーが最終的なメリットを享受することを目指している」と語った。

 また、レズニック氏は事業者がどのようにWiMAXサービスを提供するかというシナリオについて、携帯電話網の補完利用以外に固定網のサービスとセットにしたフルパッケージのブロードバンドサービスが望ましいといい、「特に固定網の普及率が高い日本は最も期待される市場だ」との見解を示した。

 WiMAXフォーラムは、現在インドと中国に開設しているオフィスを日本にも新たに開設する。レズニック氏は「WiMAXでは世界のあらゆる国がリーダーになる可能性を秘め、日本にもそのチャンスがある」と話す。

 先に総務省が示した免許方針案への印象について、レズニック氏は「既存の携帯電話事業者のWiMAX参入を制限したことに驚いたが、新しい事業者にとっては良いこと。個人的には競争によって新たなサービスが生まれる土壌ができたことを好ましく思う」と述べた。

WiMAX端末の認証はすでに始まっており、早ければ2007年内に出荷が始まる可能性もある

 WiMAXへの電波周波数割り当てが次第に決まっていく中で、現在は国際ローミングへの対応やメーカーが異なる機器の相互接続性検証が進む。機器間の接続検証は、2006年7月からこれまでに4回の作業会が実施され、宅内用機器を中心に30機種近い製品が認証を受けた。今後はモバイルPCやスマートフォン、またWiMAX機能を備えるメディアプレーヤーやデジタルカメラなどの検証にも着手する。

 国際ローミングは、レズニック氏自身が管轄するワーキンググループで、料金面を含めたサービス事業者間の調整を進めているところだという。また、アラムーチ氏は「チップセットの側でもローミング対応は当然の課題であり、各国が承認した周波数帯への対応が大切だ」と語った。

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