1000台の低スペックPCが奇跡の復活、その秘密は……

現在、全国の小中学校高校において、遊休資産と化しているPCは40万台に上るといわれる。この分野にOSSを携えて取り組んでいるアルファシステムズが松戸市教育委員会での事例を披露した。

» 2007年06月06日 23時46分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 現在、全国の小中学校高校において、すでにサポートが終了しているWindows 98/Meを搭載しているPCは40万台に上るといわれる。セキュリティ上、サポートが終了しているOSを使い続けることも問題となるが、スペックの問題から最新のOSを入れることもままならず、その有効活用について現場の教職員は頭を悩ませている。

 この状況は千葉県松戸市においても例外ではない。松戸市教育委員会では管轄する小中学校で利用していた約1000台の中古パソコン(Windows98を利用)が遊休資産と化しており、その有効活用が求められていた。しかし、このパソコンのスペックは以下のようなものであり、上述のような問題を解決するための道を模索していた。

メモリ:32Mバイト、CPU:146MHz、HDD:2Gバイト

CDドライブ:なし、NIC:10BASE-T


 こうした低スペックのPCを活用するためのプロジェクトとしては、日本電子専門学校の小菅貴彦氏が進めている「Green Barbarian」プロジェクトがある。同氏は過去に、USBメモリやCFカードなどのメモリデバイスからKNOPPIXを起動する技術を開発、日本電子専門学校ではこれを用いた演習環境を構築するなどしている(関連記事参照)

 同氏はまた、64MバイトのUSB接続型フラッシュメモリから起動できるUSB-KNOPPIX(X環境は含まず)などを作成しているが、これ以上のダウンサイズバージョンの作成は難しいものがあり、今回のようなメモリ32Mバイトという制限下では違った方法を考える必要があった。

 今回、松戸市教育委員会はKNOPPIXカスタマイズサービスなどを手がけるアルファシステムズとともに、この遊休資産の活用を検討、KNOPPIXの画面転送方式を利用したシンクライアントにその解を求めた。

 クライアント側は、GUI画面起動後にサーバに接続。サーバでは、ウインドウマネージャやウェブブラウザが立ち上がり、その画面をsshトンネルを通して、クライアントへ送信する。また、音声サーバを立ち上げ、そのデータをクライアントに送信することで、FLASHコンテンツなどの再生も可能にしている。これにより、Webを利用した調べ学習での利用であれば十分に利用可能なものとなった。

 Firefoxについてもカスタマイズが施されている。拡張機能としてタブ機能を抑制する「tab killer」と、Webページを保存する「scrapbook」をインストールした上で教育上 不必要なメニューを隠している。

 今回の施策で、古いPCを再活用させる予算の目安は、PC1台当たりおおよそ5000円〜10000円。

 上述した小菅氏は現在、オープンソースソフトウェア(OSS)ベースのIT環境を学校教育にも導入し、マルチプラットフォームの学校教育現場への普及を促進することを目的とした「Open School Platform(OSP)」プロジェクトに携わっている。今回のような取り組みをはじめ、事実上遊休資産と化している40万台ものPCに今後OSSが浸透していくことが期待される。

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