GPLバージョン3へアップグレードすべき理由Richard-Stallman's Voice(1/2 ページ)

GNU GPLv3が近く完成し、フリーソフトウェアパッケージはGPLv2からGPLv3へアップグレードすることができるようになる。この記事では、GPLv3へライセンスをアップグレードすることが重要である理由を説明する。

» 2007年06月07日 00時00分 公開
[Richard-Stallman,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 GNU GPLv3(GNU一般公衆利用許諾契約書バージョン3)が近く完成し、フリーソフトウェアパッケージはGPLv2からGPLv3へアップグレードすることができるようになる。この記事では、GPLv3へライセンスをアップグレードすることが重要である理由を説明する。

 まず始めに、アップグレードは必須ではないという点をおさえておくことは大切だ。GPLv2は今後も有効なライセンスであり続ける。一部のプログラムが GPLv2に留まったまま、そのほかのプログラムがGPLv3へアップグレードしたとしても、何か非常に困る大変なことが起こるわけではない。GPLv2と GPLv3との間に互換性はないが、そのことは深刻な問題ではない。

 GPLv2とGPLv3が非互換であるということはつまり、GPLv2の下にあるコードとGPLv3の下にあるコードとを1つのプログラムの中で合法的に混ぜ合わせる方法はないという意味だ。その理由は、GPLv2とGPLv3がどちらもコピーレフトのライセンスであるためだ。どちらのライセンスも「このライセンスの下にあるコードを『より大きなプログラム』の中に含める場合には、その『より大きなプログラム』もこのライセンスの下に置かなければならない」としている。GPLv2とGPLv3に互換性を持たせるようにすることは不可能だ。GPLv2と互換性を持たせるための条項をGPLv3に加えることはできたかもしれないが、GPLv2の側にもGPLv3と互換性を持たせるための条項を加える必要があるため、GPLv3だけにGPLv2と互換性を持たせるための条項を作っても意味がない。

 幸いなことにライセンスの非互換性が問題となるのは、2つの異なるプログラムからのコードを1つのプログラムの中にリンク/マージ/混合したいという場合だけだ。1つのオペレーティングシステムにおいて、GPLv3の下にあるプログラムとGPLv2の下にあるプログラムとを同時に利用しても問題はない。例えばTeXライセンスとApacheライセンスはGPLv2と非互換だが、LinuxカーネルとBashとGCCを使っているシステム上でTeXやApacheを実行しても問題はない。理由は、それらがすべて別々のプログラムであるためだ。同じように、仮にBashとGCCがGPLv3へ移行して、LinuxカーネルがGPLv2のままであったとしても、ライセンス上は何ら問題はない。

 GPLv3に移行する理由は、プログラムをGPLv2のままにしておくと何か新たに問題が発生するからではなく、GPLv3がGPLv2の既存の問題に対処しているからだ。GPLv3が阻止しようとしている、とりわけ大きな脅威にTivo化がある。Tivo化とは、コンピュータ(「アプライアンス」と呼ばれる)がGPLのソフトウェアを含んでいるが、そのGPLのソフトウェアが変更されたことを検出するとアプライアンスが機能停止するため、事実上そのGPLのソフトウェアを変更することができないという状態になっていることだ。通常Tivo化を行うのは、多くの人が望まないような機能をソフトウェアに含めた上で、そのような機能を削除されたくないとメーカーが考えている場合だ。そのようなコンピュータのメーカーは、フリーソフトウェアが与える自由を利用している一方で、あなたには同じ自由を与えないでいる。

 自由市場でのアプライアンス間の競争があれば、そのようなたちの悪い機能は少量に留まることになるだろうという議論もある。確かにそのような競争原理からだけでも、「毎週火曜日の午後1時から午後5時までの間にシャットダウンしなければならない」というような独断的で無意味な機能は淘汰されることになるだろう。しかしそうだとしても、支配者を選ぶことができるというのは自由であることとは違う。自由というのは、あなたの代わりに決定権を持つほかの誰かに対して単に懇願したり脅迫したりすることができるということではなく、あなたのソフトウェアの動作を「あなた」が支配することができるということだ。

 またDRM(デジタル「諸制限」管理――あなたのコンピュータ上のデータをあなたが利用することについて制限することが目的の、たちの悪い機能)という非常に重要な分野では、競争はまったく役に立たない。というのも、適切な競争が禁じられているためだ。「DVD陰謀団」の正式な規定によると、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)やそれに類した法律の下では、米国やそのほかの多くの国々において、ユーザーの自由を制限しないDVDプレイヤを流通させることは違法行為となっている(なおこのDVD陰謀団のWebサイトはhttp://www.dvdcca.org/だが、この規定については記載されていないようだ)。つまり非DRMプレイヤーは入手可能になっていないため、人々は非DRMプレイヤを購入することによってDRMを拒否するということができない。どれほど数多くの製品から購入するものを選ぶことができたとしても、それらにはすべて同じデジタルの手錠がかけられている。

 GPLv3は、あなたがそのような手錠を自由に取り外すことができるということを保証する。とは言ってもGPLv3では、DRMを含めいかなる機能も実装することが禁止されているわけではない。言い換えるとGPLv3は、あなたがプログラムへ追加する(あるいはプログラムから削除する)何らかの機能に対して制限を設けることはしていない。そうではなくGPLv3は、あなたにプログラムを配布したメーカーが自由に追加したたちの悪い機能を、あなたが彼らと同じく自由に削除できることを保証している。Tivo化はあなたからそのような自由を奪うための手段であるが、GPLv3はTivo化を禁止することであなたの自由を守る。

 Tivo化の禁止は、消費者による利用(時折の利用であっても)が予期されるすべての製品に適用される。GPLv3ではほぼもっぱらビジネスや組織での利用を目的とした製品についてだけTivo化を容認している(GPLv3ドラフトの最新版では製品がどちらに該当するのかの判断基準が明記されている)。

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