今や数も増え、多機能となったWAN高速化/最適化製品。それだけに導入も慎重に進めたいところ。ベンダーのうたい文句に惑わされない、確実な検討方法はあるのか。
本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「最適化から始まる、WAN高速化への道」でご覧になれます。
岩本直幸(ネットマークス)
個人情報保護法や日本版SOX法などのセキュリティ強化の流れや企業価値を高めるためのコスト削減に対応するため、現在ネットワークやストレージ、アプリケーションの見直しが行われている。セキュリティ強化やコスト削減を目的としたセンター統合を行う上で、WAN回線上の遅延や輻輳(ふくそう)という問題が発生し、拠点からセンター統合されたデータへのアクセスが遅くなり、結果として生産性が下がるという問題を生んだ。それを解決するためにWAN高速化装置が必要とされている――。これまでのオンライン・ムックで、ここまではご理解いただけたと思う(関連記事1、関連記事2)。
それでは、WAN高速化装置をどのような基準で選択し、どのようにすれば効果的な導入が行えるのか。これまで同様、ここではシスコシステムズ、パケッティア、ジュニパーネットワークス、F5ネットワークス、リバーベッドテクノロジーの5社を主要ベンダーとして定義する。理由としては、これら5ベンダーの知名度が高く、WAN高速化ソリューションの導入実績を持つ企業だからである。
これらのベンダー製品を分けるポイントとして、セキュリティ面の考慮が挙げられる。そもそも拠点にあるサーバをセンター統合し、サーバに保存された機密情報の漏えいを防ぐことがセキュリティ強化の目的であるため、拠点にサーバと同じように機密情報となるデータが置かれる製品はセンター統合の要件には合わない。ここでは、ファイルを暗号化してもそのファイルを復号化することが不可能ではないため、データそのものが拠点に置かれない仕組みが重要だと考える。もちろん、センター統合ではなく、拠点間のファイル共有を高速化することが主目的であれば、データが拠点に残っても問題がないし、そもそも機密情報に拠点からアクセスできない環境であれば、データを拠点に残した方が高速になるケースもある。
このようにセキュリティ統合が必要か否かで製品を選ぶと、セキュリティ統合が必要な場合にはジュニパー、F5、リバーベッドなどのWANアクセラレータ製品を、統合が必要ない場合にはシスコ、パケッティアなどのWAFS(Wide Area File Service)製品を選択する。
これまでの製品比較では、上述した(1)拠点装置のデータ保存方法以外に、(2)WAN上のプロトコル、(3)対応するアプリケーションという点で比較を行ってきた。
ネットワーク構成やWAN上の装置によっては、(2)のWAN高速化装置で使用するWAN上のプロトコルに影響されることがある。例えば、回線を冗長化している環境にWAN高速化装置を導入し、1.5Mbpsの主回線に合わせて速度調整を行う場合、バックアップ回線が主回線よりも細い環境だと通信ができなくなるケースがある。これは、WAN高速化装置がTCP/IPベースではない場合に発生する。また、TCP/IP以外の通信が制約されているネットワークもあることから、カタログスペックを見るだけではなく、実際の環境でテストを行わなければ導入の判断はできない。
WAN上のプロトコルがTCP/IPベースとなるのはリバーベッドとシスコ、それ以外がジュニパー、F5、パケッティアとなる。
また、対応アプリケーションの点では、Windowsファイル共有以外のアプリケーション高速化機能を搭載している製品と、Windowsファイル共有に特化した製品に大きく分類することができる。これについては、多機能製品としてジュニパーとリバーベッド、特化型製品としてシスコ、パケッティア、F5の2グループに分けられる。
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