ハードウェアベースで携帯電話を保護する新技術、Spansion

フラッシュメモリベンダーの米Spansionは、ハードウェアベースで携帯電話を保護する新技術の本格展開を始める。

» 2007年07月19日 07時00分 公開
[ITmedia]

 フラッシュメモリ専業ベンダーの米Spansionは、2月に発表した携帯電話向けフラッシュメモリにセキュリティ機能を組み込む「Spansionセキュア・テクノロジー」の量産を間もなく開始する。ハードウェアレベルでデータ保護するメリットとは何か。ワイヤレスジャパン2007で来日したストラテジック・プランニング&システム・エンジニアリング担当バイスプレジデントのジョージ・ミナシアン博士に聞いた。

ジョージ・ミナシアン博士

 Spansionセキュア・テクノロジーは、フラッシュメモリ自体に認証や暗号などのセキュリティ機能を組み込むサブシステムで、最大16カ所のメモリ領域に対して個々にセキュリティ機能を持たせることができる。

 メモリ内には、端末管理の領域やOS領域、アプリケーションデータ領域、個人情報領域、マルチメディアデータ領域などが存在するが、それぞれの領域を使用する通信事業者やベンダー、ユーザーが必要に応じたセキュリティ機能を利用できるのが特徴だ。

 SIMロックとリモート監視機能、リカバリ機能、無線経由でのファームウェアアップデート機能も備えるため、例えば携帯電話端末が紛失や盗難の被害に遭遇した場合にリモート操作で端末をロックさせたり、ウイルス感染の場合に以前の状態にロールバックさせるといったことが可能になる。また、著作権の伴うマルチメディアコンテンツ、クレジットカード番号など機密情報の不正利用を防止することできる。

仮にウイルスがメモリ内に侵入しても、OSや他のデータ領域が隔離されているためハードウェア操作で端末を完全復帰することができるという

 「データに対する考え方は、通信事業者やベンダー、コンテンツプロバイダー(CP)によって異なる。通信事業者はネットワークに影響が無いよう必要限度のデータ利用を求め、ベンダーはオープンな環境でのデータ活用を望む。CPはコンテンツの管理を求める。Spansionセキュア・テクノロジーはこうしたニーズに対応するプラットフォームになる」(ミナシアン氏)

 日本の携帯電話を例に見れば、端末内には着信メロディや映像、デジカメの写真、電子マネーと多彩なデータが保存されている。これらのデータを保護する機能はすでに実現しているが、基本的にはソフトウェアとCPUの組み合わせで保護されている。

 ミナシアン氏は、「現在はソフトウェアに依存するため、必ずしも絶対的なセキュリティを実現できるとは限らない。メモリベースでもデータを保護することによって、さらにセキュリティを向上させることができるだろう」と話す。

 ミナシアン氏によれば、Spansionセキュア・テクノロジーが端末開発コストに与える影響は1%以下であるといい、端末メーカーはベースバンドチップを入れ替えなくても高度なセキュリティ機能を端末に実装できるとしている。

 また、新規ユーザーの増加が著しい携帯電話新興国の通信事業者では2GのGSMインフラを構築したばかりだというケースも数多くあるが、Spansionセキュア・テクノロジーを搭載する端末を活用することで、3Gで求められるようなリッチコンテンツや電子決済などの最先端の携帯電話サービスを最小限の投資で導入できるメリットが生まれるという。

 Spansionセキュア・テクノロジーは2007年後半から量産を開始し、早ければ2008年から実装した端末が発売される見込み。将来的には単一のダイ上にフラッシュメモリとSpansionセキュア・テクノロジーを集積して小型化を図るなど、統合ソリューションとしても提供も検討していく。

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