職場がオープンなWeb2.0を取り入れるのは必然か?エンタープライズ2.0時代の到来(2/3 ページ)

» 2007年08月23日 07時00分 公開
[大澤文孝,ITmedia]

エンタープライズ2.0は消えてしまうのか

 エンタープライズ2.0の特徴は、言うまでもなくWeb2.0の技術を使うことにある。Webが普及した現在、従業員はすでにWebのユーザーインタフェースに慣れていると想定できる。そのため、独自のユーザーインタフェースを使う従来の企業システムに比べて仕組みを理解しやすく、新しいシステムであってもすぐに使いこなせるはずだ。企業システムの習得にかかる時間を減らすことができる。

 また従来の企業システムは、そのほとんどが閉じているため、業務間の連携をとるのが難しかった。もちろん、大規模な業務システムではXMLやSOAPなどを使ってデータを交換できる。しかし誰がデータ交換用のアプリケーションを書き、さらにそれをどうつなげるのか。「技術的にはできる」が「莫大なコストが掛かる」ことが分かる。安易な拡張はできない。これに対して、エンタープライズ2.0は極めてオープンなシステムというメリットを持つ。

 エンタープライズ2.0のシステム間における連携性は高く、既存のWeb2.0用のツールも使うことができる。例えば、ブログシステムには、「Blogger API」や「Movable Type API」といった投稿や閲覧用のWeb APIが搭載されているのが一般的だ。これらのWeb APIを使って投稿や閲覧ができる優れたシェアウェアやフリーソフトがある。またPerlやPHPでWeb APIを使ったスクリプトを書くのも、さほど難しいことではない。またほかのシステムで作られた業務日誌を、エンタープライズ2.0のシステムに自動的にアップロードするという連携運用は、少しのスクリプトを記述するだけで実現できる。

image エンタープライズ2.0は拡張が容易

 企業システム導入の敷居を下げることも見逃せない。従来の企業システムには大規模なものが多く、中小企業ではコスト的に見合わなかったり、余分な機能が付くなどむしろ使いにくいことも多かった。しかしエンタープライズ2.0では、既存のWeb2.0向けのソフトウェアをそのまま利用できることが多く、そのような問題に陥ることはあまりない。

 適当なサーバを構築し、WikiやSNSなどのソフトをインストールしてカスタマイズするだけで、企業システムの一部として機能する。この場合、コストはほとんどゼロに近い。とはいえ、企業システムが止まると業務も停止してしまうというリスクを考えると、本格運用の際は専門家に依頼すべきだ。専門家に依頼する場合でも、サービスごとに分離できるので必要なものだけを導入できる。つまり、オールインパッケージとして導入していた従来の企業システムに比べてコストを削減できる。

 以上がエンタープライズ2.0の主な特徴である。エンタープライズ2.0という言葉はマーケティング用語という側面があるため、近い将来失われていくかもしれない。だが仮に言葉が消えてしまっても、企業システムにオープンなWebの仕様を取り込んでいく流れは残るだろう。

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