「早く成功して、エッセイストになりたいんです!」
南場さんの率直で現場的な視角は、言ってみればエッセイストの資質である。事実、彼女の書いたものは、読物としてべらぼうに面白いのだ。
(中略)
そのとき、この人が人を集め、動かすときの魅力がパッと垣間見えた。南場さんは、自分の「人間」を隠さない。その「人間」性には、はっきりとした目的があり、そのための強い意思と、一緒に居たくなる面白そうなエネルギーが渦巻いているのだ。人は「面白い」ことに弱いのである。
面白ければ、リスクも負えるし、つらいことにも耐えられる。それを与える能力は、確かに起業家の資質の一つだろう。
僕からすれば、エッセイストなんかになるより、起業家のほうがすごい気がするが、とにかく楽しくなるくらいの喜びようだった。でも、成功ってどのあたりまでのことをいうんだろう。もう、かなり成功しているようにも見えるけど、まだ彼女にとってエッセイストへの道は遠いんだろうか。
たしかに、起業家として成功し、かつ文章が書けて面白くても、そのままエッセイストになれるかといえば、そうはいかない。やっぱり、何かプラスαみたいなものがあって、案外何かを捨てないとできないことなのかもしれないけれど、まぁエッセイストなんて何歳でなってもいいもんだし。
なつめ ふさのすけ
1950年、東京生まれ。青山学院大学史学科卒。72年マンガ家デビュー。現在マンガ・コラムニストとしてマンガ、イラスト、エッセイ、講演、TV番組などで活躍中。夏目漱石の孫。
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