「サービスデスク」導入は即効性アリ!?初心者歓迎! ITIL連載講座(1/3 ページ)

今回から、IITLが提唱しているITサービスマネジメントにおける「機能」と「プロセス」について順を追い解説する。また、ITILが定義しているいくつかの重要な用語に関しても説明しておこう。

» 2007年09月27日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

このコンテンツは、オンライン・ムック「運用管理の過去・現在・未来」のコンテンツです。関連する記事はこちらでご覧になれます。


「サービスプロバイダ&顧客&ユーザ」の関係

 まずは例え話から。企業から依頼を受け、その企業のホームページを作成しているデザイン会社、A社があるとしよう。A社は顧客からお金をもらってサービスを提供する「サービスプロバイダ」である。A社はこのたび、カメラメーカーのB社から、B社のホームページの制作依頼を受けた。この場合、A社にとってB社は「顧客」である。そして、完成したホームページを実際に利用する「ユーザ」とは、B社のカメラが欲しいと思ったか、またはすでに持っていて、何らかの情報が欲しいと思ってそのホームページにアクセスする一般消費者のことである。

 「サービスプロバイダ」であるA社は、顧客であるB社の意向をくみながら、なおかつユーザである一般消費者が求める機能や使い勝手のことを考えてサービスを提供(Webページを制作)する必要がある。

 ここまでが例え話。しかしここには重要な意味が含まれている。すなわち、以下のような定義が成り立つ。

種類 定義
サービスプロバイダ 顧客からお金をもらい、ユーザが期待するサービスを提供する人
顧客 ユーザが快適なサービスを受けることを期待して、お金を出す人
ユーザ 実際にそのサービスを使う人

 ITILにおいても、これと同じ考え方を採用している(図1)。

図1:一般的な「サービスプロバイダ」「顧客」および「ユーザ」の関係

 社内におけるIT運用部門は、従業員が快適にITサービスを利用できるよう努力しなければならない。その場合、従業員とは、IT運用部門が用意するさまざまなITサービスを実際に利用する人であり、ITILでは「ユーザ」と呼ぶ。

 また、そのIT運用を円滑に行えるようにするために適切な投資をし、IT運用部門に対してさまざまな方針を打ち出したり、ユーザやIT運用部門からのリクエストを認可/拒否したりするのは会社そのもの、あるいは会社の経営者層だということになる。すなわち「顧客」とは、従業員がITサービスを滞りなく、効率よく使用して職務を果たしてくれることを期待している経営者層のことを指すのである。

ITILの基本的な考え方を読み取ろう

 ここに、ITILの基本的な考え方が見え隠れしている。IT運用管理部門は普通に考えれば企業の間接部門であり、直接利益を生み出す部門ではない。しかし ITIL ではそうは考えない。会社組織をひとつの社会とみなし、顧客(経営者層)のリクエストに応えてユーザ(従業員)が安心してITサービスを受けられるよう支援する「サービスプロバイダ」的役割を果たすのがIT運用部門だ、と考えるのである。

 したがってITILにおける「IT運用にかかるコスト」は、費用ではなく投資であると考える。そしてその投資は、顧客(経営者層)にも、ユーザ(従業員)にも、そしてサービスプロバイダ(IT運用部門)にもメリットがなければならない。投資が最大の効果をもたらすように、さまざまなプロセスを整備しておきましょう、というわけである。

 つまり、IT運用部門は費用をかけて社内の環境を整備する「コストセンター」ではなく、適切な投資をして利益を生み出す「プロフィットセンター」である、という意識を持つ必要がある。この意識は、経営者層にも、IT運用部門の担当者にも必要なことである。また、ここでいう利益とはすなわち会社そのものの利益のことであり、IT投資によって得られる業務効率の向上やIT環境に対するユーザ満足度の向上、実際の売上の増大などを指す。

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