若者の75%が無気力――上司の気力にも不安が人心掌握の鉄則(2/2 ページ)

» 2007年10月01日 07時57分 公開
[アイティセレクト編集部]
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環境と動機付けの両輪が鍵

 米国の臨床心理学者であるハーズバーグが行った有名な調査がある。アメリカの労働者に仕事に関して「満足した出来事」と「不満を感じた出来事」を拳げてもらったのである。その結果「満足した出来事」として拳げられたのは、仕事を「達成」したこと、周りの人間に「承認」されたこと、「仕事そのもの」の順番で高かったのに対し、「不満を感じたこと」というのは「会社の方針と管理」「監督」「監督官との関係」の順で高かった。面白いのは調査ではすべての項目に関して「満足した」「不満足だった」いずれかを選べる形であったのに、項目によってきっちり2つに分かれたことであった。例えば満足したと回答した上位の項目「達成」「承認」「仕事そのもの」は、ほとんど不満足の要因としては上げられることはなかった。逆に不満足の上位項目である「会社の方針と管理」「監督」「監督官との関係」はほとんど満足の要因としては挙げられなかったのである。

 これはいったい何を意味するのか?

 ハーズバーグはこの調査などをもとに、人間の欲求には2つの要素があると結論付けた。1つは作業環境や給与、労働条件などの「衛生要因」。もう1つは仕事の達成や業績の承認、職務に対する責任や権限などの「動機付け要因」。そして人を積極的に仕事に向かわせるのは「動機付け要因」の方であると主張した。

 これが有名なハーズバーグの「2要因仮説」である。作業環境や労働条件など「衛生要因」が悪ければモチベーションのマイナス要素にはなるが、たとえそれがよかったとしてもプラスの要因にはなりにくい。逆に「動機付け要因」はこれが満たされないからといって大きな不満にもならないが、満たされないうちは決して仕事に満足することはできない。

 「給料もそこそこもらって、残業もそんなにさせていないのに、いったい何が不満なんだ!」。もしあなたがやる気を見せない部下に対してそう考えるとしたら、それは大きな間違いということだ。なぜなら給料も残業もみな「衛生要因」であり、それが満たされているからといってすなわちやる気が起きるというものではないからである。

 上司が部下に対して抱くこのようなねじれた解釈は実は彼らの個人的関係だけにとどまらない。実は会社そのものが「衛生要因」と「動機付け要因」を整理できずに的外れな人事や評価制度を行っているケースが多いのである。

 その結果が先の調査にもあった75%の「無気力な」若者の出現なのかもしれない。

月刊アイティセレクト」2007年11月号 特集「モチベーションコントロールに役立つ 人心掌握術の鉄則」より)

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