ジョブズ氏、タキシードで登場――カリスマが幻の次世代PCをアピール温故知新コラム(2/2 ページ)

» 2007年10月24日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]
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ジョブズ氏が語る“I love making computers.”

 たっぷり2時間の“独演会”は、前半がNeXTの背景説明、後半が実演だった。背景説明の冒頭では、「コンピュータのアーキテクチャは10年の寿命を持っており、たいてい中期にピークを迎える。アーキテクチャから見てこれまで、77年に出現したAppleII、81年に出現したIBM PC、84年に出現したMacの3つのコンピュータがある。だがIBM PCはすでにピークを過ぎ、Macも今年ピークを迎えるだろう。NeXTは第4の波になる」と声高らかに宣言。その後、「NeXTこそが次世代マシン」と何度も強調してみせた。

 ここで、NeXTがどんなマシンだったかを少し紹介しておこう。キューブと呼ばれた本体には書き換え自在の256Mバイト光磁気ディスク装置を搭載。CPUに68030、FPU(浮動小数点演算プロセッサ)に68882を採用し、さらにDSP(デジタル信号処理プロセッサ)を搭載してサウンド、音楽、イメージ処理、モデム、FAX、暗号化などの機能を持たせた。ディスプレイは内蔵式スタンド付き高解像度17インチでスピーカを装備。価格は基本構成で198万円だった。下のシステムの写真は、これにキヤノンよりOEM供給されたレーザープリンタを加えたものである。OSは「Mach」(マーク)と呼ばれるUNIXライクなもので、同OSとアプリケーションの間をつかさどる「NeXTStep」(ネクストステップ)と呼ばれるミドルウェアにも注目が集まった。

NeXTコンピュータシステム

 さて、独演会後半の実演も小さなアクシデントはあったものの、そこはユーモアたっぷりの説明で切り抜けたジョブズ氏。終了時には満場の拍手がしばらく鳴り止まないほどの盛況ぶりだった。独演会の後、ビジネスパートナーであるキヤノンの首脳陣と共同記者会見に臨んだジョブズ氏は、あらためて日本市場でのNeXTの普及に向けた強い意欲を示し、まさしく“ジョブズ・デー”となったこの日の有終の美を飾った。

 その後、NeXTは結果として「第4の波」を起こす存在にはなり得なかったが、ジョブズ氏の革新的な商品を生み出そうとする情熱を物語るエピソードとしては、今も語り草となっている。その象徴的なコメントを記者会見のひとコマで聞くことができた。

 「I love making computers.」

 この思いこそがジョブズ氏のカリスマたる所以なのだろう。(肩書きはすべて当時のもの)

このコンテンツは、月刊サーバセレクト2005年8月号の記事を再編集したものです。


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