FacebookがGoogleではなくMSを選んだ理由

GoogleはFacebookに合った相手ではないとアナリストは指摘している。

» 2007年10月26日 15時39分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 MicrosoftがFacebookの株式の1.6%を2億4000万ドルで買収することで、同サイトの買収希望者としてのGoogleは閉め出され、MicrosoftとFacebookはオンライン広告への関心をある程度本格的に追求できるようになる。アナリストはこのように分析している。

 Microsoftはまた、今後も引き続きFacebookの独占的広告プラットフォームとなり、米国外のFacebookサイトでも広告販売を開始する、というのが10月24日に発表された提携の概要だ。

 株式取得により、Microsoftは実質的にGoogle、Yahoo!などほかのFacebook買収希望者を閉め出し、Facebookに150億ドルの価値があると認めたことになる。広告提携の拡大で、Microsoftは広告事業を拡大できる位置に立つ。

 Facebookユーザーの約60%は米国外にいる。24日の電話会見で、Microsoftのプラットフォーム・サービス部門社長ケビン・ジョンソン氏は、今後2〜3年で世界オンライン広告市場は800億ドル規模になるだろうと語った。

 業界専門家の間では、Microsoftにとっての主なメリットは、緒に就いたSNS広告のエコシステムに足がかりを得ることだという点で意見が一致している。

 Gartnerのアナリスト、アレン・ウェイナー氏は、GoogleがYouTubeとDoubleClickを買収したことで、MicrosoftにとってはFacebookを確保し続けることが重要だとしている。Facebookは、comScoreの9月の調査ではユニークビジター7350万人、世界で6番目にアクセスが多いサイトだ。

 一方、IDCのアナリスト、レイチェル・ハップ氏は、GoogleはFacebookに合った相手ではないと指摘する。広告を絞り込む手法が異なるからだという。Googleはコンテンツや文脈に広告を合わせるが、Facebookは個人やその関心に広告をマッチさせる。

 Microsoftに少数の株式を渡すのと引き替えに、Facebookはかなりの額の現金を手にする。これは同社が来年、300人から700人に人員を拡大する上で役立つだろう。もっと重要なのは、同社がGoogleなどほかの企業に取り込まれるのを防ぐことだとハップ氏は言う。

 同氏は、今回の取引はMicrosoftにとってお得だと語る。Facebookのユーザー情報を一部利用できるようになるからだという。電話で取材した関係者はこうした部分の合意内容について明らかにすることを拒んだが、同氏は、Facebookのユーザー情報はMicrosoftが「コンバージョン貢献度」を探る上で役に立つだろうと語る。

 これは、ユーザーのクリック経緯を追跡し、コンバージョン(購入や申し込み)にどの程度貢献したかを勘案しつつ広告売り上げの分配方法を決めようというもの。Microsoftがこの手法を実践するためには多くのユーザー行動データが必要であり、それこそがFacebookのもたらすものだ。

 「Microsoftはアルゴリズムを作って効果的にテストできるよう、この情報にお金を払う。そして(GoogleとYahoo!に対する)勝利が隠された場所を手に入れる」(同氏)

 さらに、Microsoftはユーザーデータを利用できるようになるが、ジョンソン氏は電話ではほとんどそのことについて説明しなかった。これは、MicrosoftがFacebookに広告を配信する以上に深いレベルの取引になるのだろうか? MicrosoftがFacebookのオープンプラットフォームアプローチに何かを学び、価値を見出す可能性はあるだろうか?

 Gartnerのウェイナー氏は、その可能性がないわけではないと言う。

 「光り輝く新しいWeb2.0企業と提携するときには、何らかのハロー効果があるかもしれない。Microsoft社内のエンジニアの考えが少し変わる可能性はある」(同氏)

 Facebookのオープンアプローチが、Microsoftのリッチアプリケーションツール「Silverlight」に影響する可能性はわずかだがあるだろうと同氏は言う。MicrosoftはSilverlightをAdobeのFlashの代わりに使ってもらうよう人々を説得しなければならないため、オープンアプローチはこのツールに恩恵をもたらすだろうと同氏は指摘する。

 ただし、Facebookの技術開発がMicrosoftにおけるそれに影響を及ぼすかもしれないという考えは実現しそうにないと同氏は注意を促している。新しいプラットフォームを投入する際のMicrosoftの生来的なやり方に反するからだという。ハップ氏も同意見で、Microsoftは独自技術を所有することを好むと指摘する。

 では、Googleはどういう位置にいるのか? 同社は11月に傘下のSNS「Orkut」を開発者に開放し、新たな高みへ引き上げるとみられている。

 MicrosoftとFacebookの提携がSNS業界でのGoogleの立場に正確にどう影響するのかは不明だ。

 Orkutはブラジルでは非常に人気があるが、ほかの国ではそれほどでもない。ウェイナー氏は、MicrosoftとFacebookの提携が確実なものとなるまで、GoogleはOrkutの拡大を控えてきたのではないかと語る。

 「MicrosoftはFacebookと平行に進み、GoogleはFacebookと交差する。それはFacebookが取りたくないリスクかもしれない」(同氏)

 最終的には、Google、Microsoft、FacebookはSNSのオンライン広告を求めていく中で、互いだけではなくほかのプレイヤーとも争わなくてはならない。この分野の企業は、広告でSNSから収益を上げようと急ぐあまりにユーザー体験を台無しにすることがないよう気をつけなければならないとウェイナー氏は語る。

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