オープン性と統合環境の両立がスマートフォンOSの命(1/2 ページ)

スマートフォンOSでは世界トップシェアのSymbian。日本ではNTTドコモのFOMA端末で数多く採用され、その存在感を高めつつある。その原動力は、汎用OSとしてのオープンな開発環境と、通信端末の機能を支える統合環境だという。

» 2007年11月07日 07時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 スマートフォン用OS「Symbian OS」の世界シェアが高まっている。2007年第3四半期は、約2070万台の端末を出荷し、同期中だけで2006年の総出荷台数を上回った。その背景には、汎用OSとしてのオープンな開発環境の広がりと、携帯通信端末の機能を支える統合環境にあるという。同社の取り組みと今後の展開について、英Symbian調査研究担当副社長のデビット・ウッド氏に聞いた。

ITmedia Symbian OSの出荷が拡大しています。この背景には、9月末で8314種類(前年比36%増)にまで増えたアプリケーションの普及が一因となっているのでしょうか?

ウッド アプリケーションの普及には3つの理由があると思います。1つ目はSymbian端末が1億台以上普及していること。ライセンスビジネスとして、開発者には魅力的な市場です。2つ目は多数のAPIを公開している点です。例えば、アプリケーションはOSの通信機能を利用できます。これを、われわれは「オープンフォン」と呼んでいます。

Symbianデビット・ウッド調査研究担当副社長

 そして、3つ目が開発環境の拡充です。SymbianではSDKの提供やJavaやFlashなどの汎用的な開発言語をサポートしています。ネイティブアプリケーションの開発にはC++が必要ですが、C++で開発を目指す技術者向けに、教材の提供を始めとする支援を世界中で行っています。

ITmedia 日本では開発環境の整っているMicrosoftのWindows Mobileが、スマートフォンOSとしての知名度を高めつつあります。

ウッド Symbian OSはスマートフォンにフォーカスしているため、バッテリ管理やアプリケーションのパフォーマンス管理が特徴的です。そのため、開発者にとっては、長時間駆動とパフォーマンスを両立させるモバイルデバイスならではの要素を踏まえたプログラミングが求められ、開発には時間が掛かります。

 そこで、今年から「P.I.P.S. Is POSIX on Symbian OS」の提供を始めました。これは、Symbin OS向けのPOSIXコードライブラリで、C言語でもSymbianのネイティブアプリケーションを開発できるようになりました。

 また、米Red Five Labでは、「.NET Compact Framework for Symbian」を提供しています。これが、Microsoftの.NET環境とSymbianの橋渡し役になり、Windows MobileとSymbian OSの開発環境の溝を埋めてくれると期待しています。特に企業で使われるようなスマートフォン端末用のアプリケーション開発には、こうしたツールの存在が必要不可欠です。

ITmedia Symbianでは「Symbian Signed」と呼ばれる、独自のアプリケーションの検証/審査制度があります。

ウッド Symbian Signedは、通信事業者や端末メーカー、そしてエンドユーザーがSymbian OSを安全に利用できることを目的としたものです。Symbianは汎用的なOSですが、何でもかんでもオープンにはできません。オープンな環境はマルウェアなどの脅威に絶えずさらされ、通信事業者をサービス停止へと追い込む危険性さえあります。

 こうした危険性を排除するため、Symbian Signedでは開発者の身元やアプリケーションの安全性を審査し、安全に提供する仕組みを用意しています。第三者機関が審査を行うので時間は掛かりますが、すでに信用できる開発者には、自社環境でのテスト結果に適合性が認められれば承認を行う「Express Signed」サービスもあります。

 日本ではノキア・ジャパンなどがSymbian Signedの窓口となっています。今後は、日本の開発者の方がさらに利用しやすいSymbian Signedの仕組みを提供していきたいと思います。

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