無線LANのアルバネットワークスは、同社初の企業向けIEEE 802.11n対応製品を発表した。
無線LAN専業ベンダーのアルバネットワークスは11月8日、次世代無線LAN規格IEEE 802.11n ドラフト2.0仕様に基づく企業向け無線コントローラとアクセスポイントを発表した。プロセッサの性能向上やセキュリティ機能、複数の無線規格の同時利用など、既存環境からの移行を配慮した設計となっている。
発表された同社初の11n対応製品は、(1)シャーシ型無線コントローラAruba MMC(Modular Mobility Controller)-6000用のマルチサービス・モビリティ・モジュール(M3)、(2)ボックス型無線コントローラ「Aruba MMC-3000」シリーズ3機種、そして(3)無線LANアクセスポイント「AP 120」シリーズ2機種。
(1)のM3は、11nの広帯域通信に対応するためデータ/制御プレーンで計32のマルチコアネットワークプロセッサを搭載、20Gbpsのスループット(MMC-6000のシャーシで4個のM3を搭載すると80Gbps)、最大512台までのAPおよび8192同時ユーザー接続を実現した。暗号化処理にも専用にマルチコアプロセッサを搭載し、AES暗号化時のスループットは最大4Gbpsとなる。1Gbpsイーサネット×10ポートおよび10Gbpsイーサネット×2ポートの有線スイッチインタフェースを装備する。
(2)は、中小企業向けの無線コントローラMMC-2400の上位機に当たる製品で、「MMC-3200/3400/3600」の3モデルが用意される。M3のネットワークプロセッサのコア数を減らしたプロセッサを搭載し、3モデルそれぞれでコア数が異なる。最大スループット、接続AP数はそれぞれ1.6Gbps/32台、4Gbps/64台、8Gbps/128台。筐体は3モデル共通で、10/100/1000Base-Tあるいは1000Base-X(SFP)のセレクタブルポートを4ポート装備する。(1)および(2)は11月1日より出荷済み。
(3)は、3×3のMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)アンテナを採用する小型AP。特徴は、2.4GHz帯対応11b/g/nと5GHz帯対応11a/nの2基のラジオチップを搭載する点で、電波出力や利用チャンネルを自動調整する独自技術「ARM」(Adaptive Radio Management)を併用することにより、2つの周波数帯で各無線規格の混在利用が可能になる。11nで運用した場合、理論値で300Mbps×2のスループットが出せる。
併せてAP-120では、暗号化処理用のアクセラレータとセキュリティの業界団体TCG(Trusted Computing Group)仕様に準拠したセキュリティモジュールを搭載しており、外部APとのVPN接続機能や、不正攻撃をブロックするファイアウォール機能をサポートする。インタフェースは、IEEE 802.3at/af PoE(イーサネット給電)対応1Gbpsイーサネットを2ポート装備。アンテナを標準装備する「AP-124」と、電波の到達距離を伸ばす指向性アンテナなどを外付けする「AP-125」が用意される。出荷時期は年内の予定。
なお、11n対応機器を利用するには、無線LANコントローラ用のOS「ArubaOS」を最新のバージョン3.3に更新する必要がある。
同社は、11n対応機器を投入する背景を「ユーザーアプリケーションが必要とするネットワークの実効速度は10〜100Mbpsに伸びており、11a/gの帯域では足りなくなってきた。一時ユーザーによるゲストアクセスや無線LAN対応モバイル機器によるアクセスが増えたことも、無線LAN広帯域化のニーズを後押ししている」(小宮博美技術統括部長)と説明する。
また、既存の無線LAN環境から11nへの移行については、無線の利用率の高い部署から段階的に進める、大規模な工事が伴わない場合にネットワーク全体で機器を一挙にリプレースする、11nの環境を既存環境に追加する、などのパスを提案。ただし、「移行は『ただつながる』だけでは不十分で、APを使ったローミングや認証が円滑にできることが前提。現在はユーザーと11n環境の運用検証を進める準備期間であり、普及するまでには標準化から1年、つまりこれから約2年はかかるだろう」(小宮氏)と、本格的な移行にはまだ時間を要するとの見方を示している。
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