「11nはもう大丈夫」――Wi-Fiのプレ標準認定は“お墨付き”になるか

無線LANの業界団体、Wi-Fiアライアンスは、IEEE 802.11n ドラフト2.0対応の無線LAN機器の相互接続検証テストを開始した。標準化前に認定を行う理由を担当者に聞く。

» 2007年06月28日 08時00分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

 「早ければ1、2カ月後には認定ロゴの付いた製品が市場に出回るだろう」。Wi-Fiアライアンス(以下、WFA)のボードメンバー、ステファン・パーム氏は次世代無線LAN規格「IEEE 802.11n」の業界動向について、このような明るい観測を示す。

 無線LANを推進する業界団体であるWFAは、米国時間の6月25日より、IEEE 802.11n ドラフト2.0に準拠した異なるメーカーの機器同士の相互接続性を検証する認定試験プログラムを開始した。横浜にあるSGSをはじめ、WFAが認定する世界8カ所の検証ラボでテストが行われる。そして、テストに合格した製品には「Wi-Fi CERTIFIED 802.11n draft 2.0」のロゴが付与される。

画像 Wi-Fiアライアンスのステファン・パーム氏。一方で、ブロードコム テクニカルディレクターの肩書きも持つ

 理論値では最大600Mbpsの通信速度を可能にするIEEE 802.11nは、来る超高速無線LAN時代のメインストリームと目される規格。現在802.11nのあとに付けられるドラフト2.0は、文字通り草案、つまりこの規格が暫定版であることを表しており、IEEEによる最終承認は2008年9月に予定されている。ではなぜ、正式な規格策定の1年以上前となるこの時期に業界団体が接続テストや認証を始めるのか。

画像 「Wi-Fi CERTIFIED 802.11n draft 2.0」認定ロゴ

 パーム氏は、その理由として、IEEEによる標準化作業の遅れを挙げる。「今回で2度目の延期であり、当初の予定から1年半遅れている」。また、IEEEが3月に承認したドラフト2.0において、IEEE 802.11a/b/gとの後方互換性やストリーム数など相互接続に必要な技術仕様が固まったとの判断もあった。認定プログラムは、標準化を待たずにコンシューマー市場を中心にドラフト1.0やドラフト2.0の対応をうたう「プレ11n」製品が続々とリリースされている中で、「相互接続が保証されていない製品を今買うべきか、標準化されるまで買い控えるべきか」といったユーザーの混乱を抑える効果がある。

企業導入も「安心」

 一方、業務システムのインフラとして11nの導入を検討する企業ユーザーにとって、この認定ロゴは安心材料となるのだろうか。同氏は、この疑問に対して「YES」と即答した。

 「この認定プログラムを、“取りあえず”という暫定措置ではなく、すべてを網羅したものにすべく、細心の注意を払って取り組んできた。エンタープライズにおいても、認定済みのドラフト2.0製品を安心して使うことができると確信している」(パーム氏)

 だがパーム氏によると、相互接続性の検証作業は簡単にはいかないという。11n規格では、アンテナや無線機の構成などは40程度のオプション項目として定義され、ベンダー側の実装に委ねられている。WFAでは、これらオプションも含めて検証を行うのだ。「製品にオプションがあったとして、それを誰が作ったとしても、通常の認証をパスしなくてはならない。もしオプションがデータ転送率を落とすようなことがあれば、それは承認されない」。

 検証のための作業量を単純に11a/b/gの場合と比較すると「4倍近くにもなる」という。プログラムのスタート時点では、アセロス・コミュニケーションズ、ブロードコム、インテル、シスコシステムズといったWFA会員企業がテスト基準機を提供し、そのほとんどがAPかクライアント用カードとなる。

 WFAの認定プログラムは、公式にはドラフト2.0の認証とIEEEによる最終仕様の認証の2段階があるとされている。2ステップになるかどうかはIEEE次第だという。

 「今回開始したプログラムを『ドラフト版』の認証だと思う人もいるかもしれない。しかしこれは、認証らしきものでも、認証の一部をなすものでもない。これはフル(すべてを網羅した)の認証だ」(パーム氏)

 なお、認定テストでは、無線LANでQoS(Quality of Service)を実現するWMM(Wi-Fi Multi Media)やセキュリティを強化するWPA2(Wi-Fi Protected Access 2)といったプロトコルの相互接続性も検証される。

 特に、IEEE 802.11eで標準化が検討されているQoS機構であるHCCA(Hybrid Coordination Function Controlled Channel Access)について、パーム氏は無線LAN端末への実装が進展していない状況だという。HCCAはアクセスポイント(AP)配下の端末が帯域や遅延時間をあらかじめAPに「予約」することで通信品質を保証する技術だが、同氏は「11nの広帯域とWMMがあれば、それほど必要にはならないのではないか」との見解を示した。

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