エンタープライズとコンシューマーの両市場で覇権を争うHPとDell

Dellは依然として企業市場を支配しているが、Hewlett-Packardはコンシューマー市場で優位を維持している。

» 2007年11月22日 15時45分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 Hewlett-Packard(HP)とDellは、エンタープライズとコンシューマーの両分野の支配者になることを目指して熾烈な戦いを続けている。

 Dellがエンタープライズ分野で強固な地盤を築く一方で、HPはコンシューマー分野での優位を堅持している。アナリストらによると、両社は必死に戦っているが、一方が他方を打ち負かすには大変な努力が必要だという。

 HPの収益をけん引しているのは、コンシューマー向けPC、特に北米市場および中国、インド、ブラジルなどの新興市場でのノートPCの販売だ。同社のマーク・ハードCEOが率いる経営陣は、事業拡大を目指してこれらの新興市場に狙いを定めている。昨年から本格的に始まったこの取り組みは、HPがライバルのDellを抑えて市場でナンバーワンの地位を維持するのに貢献した。

 カリフォルニア州パロアルトに本社を置くHPは11月19日に第4会計四半期の決算を発表し、同社のPC事業の売り上げが昨年同期比で30%増加し、総額101億ドルになったことを明らかにした。HPによると、この増収の原動力となったのは、49%の成長を示したノートPCの販売だという。

 PCの出荷総数でのリード、そして好調を持続した四半期決算にもかかわらず、HPは依然として企業市場ではDellの後塵を拝している。Forrester Researchの最近の調査によると、企業バイヤーはHPおよびLenovoよりもDellのPCを購入する傾向が強いようだ。

 HPの今四半期の売り上げは昨年同期比15%増の283億ドルと同社は引き続き増収となったが、アナリストらによると、企業市場ではDellに対するHPのポジションは当分、変わりそうもないという。一方、コンシューマー市場では、Dellが新製品の投入で足掛かりを確保しようとしているが、今後もHPの優位が続くものとみられる。

 IDCのアナリスト、リチャード・シム氏は、「企業との取引は長期契約になるため、この市場で勢力を拡大するのには時間がかかる。だがHPはエンタープライズ分野の新参者ではない。ナンバーワンでないだけだ。彼らはコンシューマー市場では苦しんではいない。同社はサービスへのフォーカスを強化する方向に進んでいる。これは業界全体の流れでもある」と指摘する。

 さらにシム氏によると、Dellが企業市場での優位を簡単に手放すとは思えず、同社はこの1年間、実績豊富なHPのサービス部門に対抗するためにサービスポートフォリオの強化に努めてきたという。Dellは11月29日に四半期決算を発表する予定であり、それを見れば同社の新戦略の成果がさらに明らかになるはずだ。

 Dellの直販モデルと低価格戦略は多数のコンシューマー顧客の獲得・維持に貢献してきたが、同社はコンシューマー事業をさらに拡大し、東欧などの新興市場に進出する方策を模索している。

 しかしTechnology Business Researchのアナリスト、ジョッシュ・ファリーナ氏によると、新興市場への注力、強力なサービス部門、幅広いノートPCの製品ラインアップといった多様な戦略を展開するHPは今後、企業市場でさらに強力なプレーヤーになりそうだとしている。

 「HPは、企業顧客とのサービス契約をテコとして、ハードウェアの売り上げ拡大を狙える。同社がこういった形で既に市場に食い込んでいるため、顧客はハードウェアの調達でDellなどのベンダーと交渉しなくても、HPから容易に入手することができる」とファリーナ氏は米eWEEKへの電子メールで述べている。

 「これは特に新興市場で重要なポイントだ。新興諸国や中小企業市場の顧客はリソースに制約があるため、サービスとハードウェアの両方を1社のベンダーにまとめることによる時間の節約は、HPが企業顧客を獲得する上で有力な訴求点になりそうだ」とファリーナ氏は付け加える。

 企業市場に向けて万全の態勢を固めたHPだが、同社は今後も引き続き、新興市場、そしてモバイル性が必須要件とされる成熟市場でコンシューマー向けブランドを推進していくものとみられる。

 「現時点の成長分野はコンシューマー市場であり、ノートPCの低価格化などのトレンドが依然として同市場の需要を促進している」(シム氏)

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