自由への行進を導くオープンなモバイルSDKAndroidが開く可能性

GoogleのAndroidのようなオープンなモバイルプラットフォームは、携帯端末業界を変革する開発の大波を引き起こすだろう。

» 2007年11月22日 19時16分 公開
[Carol Pinchefsky ,eWEEK]
eWEEK

 携帯端末用のサードパーティー製アプリケーションは以前から出回っているが、Googleの「Android」のようなオープンなプラットフォームの登場で自由な開発が促進されれば、業界の変革をもたらす開発の大波の到来を期待できそうだ。

 Treoのユーザーは以前から、このPalm OSベースのスマートフォンに各種のアプリケーションをインストールしてきた。iPhoneのようにクローズドだとされる携帯端末でさえも、人々はAppleが提供しないアプリケーションを作成するために、保証が無効になるリスクを冒してまでもiPhoneをハッキングしようとするのだ(こういった動きを受け、スティーブ・ジョブズ氏は最近、iPhone用のSDKを2008年2月に提供すると発表した)。

 しかしメーカーの思惑の裏をかくためのこういった苦労は、本当に必要なのだろうか。何とかして携帯電話を改善したいと考えている開発者は多い。こういった開発者が、(ソースコードを含めすべてが)オープンなプラットフォーム、しかも開発を制限したり禁止したりするのではなく、新しいアプリケーションの開発を促すようなプラットフォームを利用できれば、素晴らしいのではないだろうか。

 オープンソースの携帯電話の魅力はそこにある。オープンソースのOSであれば、開発者は携帯電話を改良するのに必要な権利とサポートの両方を手にすることができるのだ。これは、開発だけでなく一般のエンドユーザーにとってもメリットになることだ。

 オープンソースの携帯電話用OSとしては「OpenMoko」やTrolltechの「Qtopia」が既に存在するが、どちらもまだ市場に浸透していない。しかしGoogleの新しいオープンソースOSであるAndroidは、状況を一変させるかもしれない。Androidの登場により、開発者は創造力を発揮して独自のアプリケーションを作成できるようになるのだ(しかもGoogleは優秀なアプリケーションに総額1000万ドルの賞金まで用意している)。

 Googleでワイヤレス戦略責任者を務めるリッチ・マイナー氏は、「Androidは完全にオープンなものになる。商用に最も適したオープンソースライセンスであるApacheバージョン2用ライセンスを利用して、携帯電話のソフトウェアスタック全体をオープンソースにするつもりだ。このライセンスでは、オープンソースのコードをベースとしてあらゆる種類の派生製品を開発することができる」と話す。

少数派ユーザーに恩恵

 携帯電話の機能を修正する自由が開発者に与えられたら、何が起きるだろうか。彼らが最初に取り組むのは、不便を解消することだろう。例えば、着信音に音楽を使用する場合、自分が既に所有している歌に対してプロバイダーはもう1ドル課金しようとするが、もはやこういった問題で悩まされることはなくなる。携帯電話プロバイダーが認めていないVoIP(Voice over IP)アプリケーションも使えるようになる。携帯電話ネットワークのアプリケーションがサポートしていないフォーマットでモバイルビデオをストリーム配信することも可能になるだろう。

 オープンソース開発者が取り組むもう1つの課題は、一部の人々だけが関心を抱くような(ひょっとすれば次の大物になる可能性のある)アプリケーションを開発することである。例えば、一般のユーザーにはサーバのメンテナンスでログインするためのSSHクライアントは必要ではないだろうが、これが不可欠なツールだと考えているシステム管理者はたくさんいる。

 モバイルネットワークプロバイダーなどの企業は、新しいアプリケーションを開発するにはマスマーケットのニーズがなければならないと考えるため、少数派ユーザー向けのアプリケーションを提供することには興味を示さないのである。しかしこれは、携帯端末分野における次の大きなパラダイムシフトが、大手通信企業やそのパートナーからではなく、オープンソース開発者から生まれる可能性が高いと考えられる理由でもある。

 携帯電話などの組み込みデバイス用にオープンソース/商用アプリケーションを開発しているTrolltechのベノイト・シリングスCTO(最高技術責任者)は、「結局、これらのアプリケーションの90%はクズだが、残りの10%が業界を発展させるのだ」と話している。

関連キーワード

Android | Google | オープンソース | SDK | 組み込み


Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.

注目のテーマ