検索は次なるイノベーションを巻き起こすのか次世代検索の行き先(1/2 ページ)

検索の進化が人々の生活様式を変えたように、検索テクノロジーの進化とイノベーションは隣り合わせにある。次世代検索が示すテクノロジーは次なるイノベーションを巻き起こすのか。

» 2007年11月26日 07時00分 公開
[栗原潔,ITmedia]

このコンテンツは、オンライン・ムック「次世代検索の行き先」のコンテンツです。関連する記事はこちらでご覧になれます。


 検索が提供する機能は、ユーザーが指定したキーワードを含む文書をシステムが探すだけの単純なものである。しかし、この単純機能がテクノロジーおよびビジネス上で大きなイノベーションをもたらしたのは言うまでもない。インターネットや企業の世界では今後とも、検索の活用とテクノロジーの進化が拡大するだろう。本稿では、検索の世界で短期的に予測されるイノベーションを紹介する。

自然言語検索

 検索の世界で最も注目すべきイノベーションの1つが自然言語検索だ。従来型の検索の処理は基本的に文字列マッチで、例えば、ユーザーが“book children”と入力すると、“book”と“children”という文字列を含む文書を検索結果に出す。“books”や“child”などの派生形や“kid”などの同義語を検索することもあるが、検索エンジンが“book”や“child”の意味を理解しているのではなく、文字列にマッチしたものを拾い上げているのにすぎない。

 自然言語検索は、このような機械的処理でなく、検索エンジンに言葉の意味を理解させようという試みである。例えば、“books about children”と入力すれば「子供についての本」、“books for children”と打ち込めば「子供のための本」の情報を表示する。従来の検索エンジンは、“books about children”という文書の“about”を無視するか、それぞれの単語が含まれる文書を返すだけだ(“about”は多くの文書に含まれているため、検索結果は“books children”と入力した場合とほとんど変わらないだろう)。

 シリコンバレーのベンチャー企業Powersetがこの分野で注目を集めている。次のGoogleになる可能性を持つ企業として投資家の注目を集めていたが、テクノロジーはまだ公開されていない。後に始まったPowersetlabsという小規模な試行プログラムでは、“What did Steve Jobs say about the iPod?”という質問でWikipediaの内容を検索すると、スティーブ・ジョブズがiPodについて語った内容だけを検索結果に表示するという機能が備わっている。

マルチメディア検索

 現時点の検索エンジンでも画像や動画などのマルチメディア検索はできるが、これは画像や動画のメタデータや周辺のテキスト情報を検索するのにすぎず、求める結果が出ないことが多い。しかし昨今のパターン認識テクノロジーの進化により、この画像に似た画像を検索するといったコンテンツ自体に踏み込んだ検索ができるようになっている。

 興味深い事例として、画像処理技術のベンチャー企業Riyaが実験的に公開している「like.com」がある。マルチメディア検索をショッピングサイトに応用した例で、「この写真のモデルが持っている商品に似た商品」といったクエリで検索できる。マルチメディア検索の応用分野は違法コンテンツの検索を例として無数にあるといえる。

 ニュース番組のアーカイブを音声認識し、キーワードを入力すると番組内でそのキーワードを発言している場面をダイレクトに抽出するといった、音声分野の検索事例もある。例えば「小沢一郎」をキーワードに検索すると、膨大なニュース動画から「小沢一郎」と発言している部分だけをピンポイントで選ぶというものだ。

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