製販一体型SEへの道【その2】――提案の前に勝負は決まるITエンジニア進化論

“提案力”といえば、プレゼンなど見栄えのカッコよさに注目しがちだが、実は、その前段となる情報収集力が重要な鍵を握っている。よいインプットからしか、よいアウトプットは生まれないのだ。

» 2007年12月05日 09時30分 公開
[克元 亮,ITmedia]

提案力=情報収集力+仮説立案力+表現力

 システムの提案では、顧客からの依頼を基に提案書を作成するが、依頼内容があいまいなケースも多い。そんなときは、顧客から受け取るRFP(Request For Proposal:提案依頼書)に頼るだけではなく、仮説立案のために情報収集を行う必要がある。

 また、受注前の活動である「提案」は、RFPの提示から提案書の提出まで1〜2週間程度の時間しかないことも珍しくなく、その作業負荷を顧客に請求することもできない。多少あいまいな部分があったとしても、仮説によって補うことが求められる。顧客によっては、ベンダーからよりよい提案を求めるために、わざとあいまいにしているケースもあり、競合相手と仮説を競う側面もあるだろう。

 そのため、よい提案をアウトプットするには、インプットとなる情報を幅広く収集し仮説を立案する。そして、顧客に行動を起こさせるために、説得力をもって文章やプレゼンで表現することがポイントとなる。

情報収集の3つの視点

 無から有が生まれないように、提案には情報収集が欠かせない。この収集すべき情報には、経営状態、顧客が属する業界の動向、対象業務の3つの視点がある。

経営状態

 顧客の現状は、特に新規顧客の場合に欠かせない。例えば、経営理念や経営戦略はどうなっているのか、事業構成や売り上げ、利益の傾向はどうなっているのかなどを調べることで、システムが必要とされる背景や投資マインドなどを知ることができるからだ。これらは、その企業の公式サイトで公開されている決算報告書や会社四季報などから得られる。

業界動向

 業界動向には、業界全体が抱える課題や自主ルール、系列関係などがある。企業のビジネス活動は、何らかの法規制や業界の自主ルールに基づいて遂行されており、それらを知ることは、システム化の前提を知ることへとつながる。例えば、金融業界の法規制には、銀行法や証券取引法、保険業法などがある。これらは、業界専門紙や就職用の業界紹介本、業界団体などの公開情報を当たるのが効果的である。

対象業務

 対象の業務についてもよく調べる必要がある。経理や人事といった経営管理業務であれば、法制度などの関係から一般論でも通用するかもしれない。しかし、生産管理や販売管理といった基幹業務は、同じ業務名でも企業によって商慣習や業務ルールが異なるのが普通だ。自分の“常識”は他人と同じではないというスタンスで丁寧に確認しなければならない。業務について調べるには、書籍や業界紙にのっている事例を読むのが効果的だが、生の情報を入手するには、人脈を使って教えてもらうのがよい。

次回は、情報収集法について、さらに掘り下げて紹介したい。

著者プロフィール:克元亮

克元亮

All About『ITプロフェッショナルのスキル』ガイド。SEのキャリア形成やスキルアップをテーマに、書籍やウェブ記事を企画・執筆。近著に『SEのための聞く技術』(日本評論社)、『SEの文章術』(技術評論社)、『ITアーキテクト×コンサルタント 未来を築くキャリアパスの歩き方』(ソフトバンククリエイティブ)がある。日々の執筆や読書を、ブログ『克元亮の執筆日記』でつづっている。


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