15分で分かる2007年のブログ界(2/2 ページ)

» 2007年12月28日 12時30分 公開
[森川拓男,ITmedia]
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 スパムブログは、キーワードを書き込んだ後、それに少しでも関連のあるブログへ無差別にトラックバックやコメントを送る。記事の中身などはない。多数のブログへのリンクであったり、記事のコピペだ。そして、お決まりのアフィリエイトが貼ってある。こういうブログが急増し、検索をかけても普通のブログが埋もれてしまうケースすらあるのだ。

 そこで検索サイトも対策を練る。つまり、ブログの検索結果からの排除だ。実際には、ブログ検索を独立させることもあるので、まったくブログが引っかからないことはないが、スパムブログだけでなく、普通のブログも排除されかねない可能性もある。

 こうして見ると、「ブログ限界論」とは、結局スパム的行為によって引き起こされてきたものだと言えよう。このスパムブログ問題を解決しない限り、「ブログ限界論」というものが2008年以降もくすぶり続けるのは間違いない。

迷走するサービス事業者

 2007年のブログ界には、もう1つ忘れられないことがあった。それは、冒頭に述べたリアルへの波及につながるのだが、SNSが必ずしも閉じられたものではなくなったということだ。

 2007年で報じられた幾つかの事件では、mixiから発展してきたものがあった。次に紹介するケースを含め、mixiに書いた日記から大事になり、自分自身の立場をも壊してしまっている。もはや、SNSといえども一般に公開したブログと変わらなくなってきているのだ。

 4月7日には4月に採用されたばかりの組合員の男性が、飲酒運転と無免許運転をmixiの日記に書き込んだ。これを受けて組合では、4月17日に懲戒委員会を開催し、論旨解雇を決定。男性は、「冗談のつもりだった」というが、結果として採用されてわずか半月で解雇されたということになる。

 8月18日には、男子大学生がキセル行為やカンニング、中学生との性交渉などをmixiの日記に記載、これが2ちゃんねるなどで話題となり、退学や内定取り消しの危機にあると報じられた。

 記憶に新しいのは、12月5日、ファストフード店でゴキブリを揚げたという嘘をmixiの日記に書き込んだ男子高校生が、「社会的な責任を取りたい」として自主退学している。元々、男子学生が通う高校ではアルバイトが禁止だったことや、他にも校則違反をしていたことが書かれるなど、学校にいづらかったのかもしれないが。

 ただ、このケースでは1つ疑問がある。mixiの場合、18歳未満が登録できないはずなのに、17歳の高校生が登録していたという事実だ。つまり、mixiには18歳未満のユーザーがいるということになる。これはmixiに限らず、ほかのサービスにもいえることだが、年齢などの確認をどう取るのか、今後、サービス事業者側はしっかりしていく必要があるだろう。

 それにしても相変わらず、ブログサービス事業者が迷走を続けている。

 複数のブログサービスでは、「オフィシャルブログ(公式ブログ)」として著名人のブログを開設している。これ自体は数年前から行われていることだ。

 しかしその一方で、一般ブロガーに与える影響はどうだろうか。実際、ブログサーバの不安定さを嘆く声や、ユーザーを見ていないサービスの改悪など、2007年も常にどこかしらで聞こえ続けているのだ。

 確かに、芸能人のブログを開設することは、サービス事業者側にとっては客寄せになろう。そして、広告収入が増えることで、一般ブロガーにも無料でブログサービスを提供できる。しかし、ユーザーに不満を覚えさせるようなサービスとなってしまうことは避けなければならない。

 2007年こそはユーザーを大事にする形でサービス事業者が動いてくれることを願っていたが、どうもそれらの声は幾つかの事業者側には届かなかったようだ。それだけが残念である。

企業ベースでは利用が促進されるCMS

 一方、企業ベースで見るとどうだっただろうか。

 数年前から徐々にではあったが、2007年は特にCMSやブログツールを利用してWebサイトを構築するものが増加していた。構築しやすいことと、更新もしやすいということから、キャンペーンサイトや、映画などのWebサイトで多く見られている。

 ただ、必ずしもRSS配信しているというわけでもなく、あくまでもWebサイト構築の手段としてCMS利用しているという印象だ。RSSに関していえば、2007年においても発展途上の印象を受けている。

 シックス・アパートなど複数のブログツール、CMSツール提供社も、企業への導入を積極的に推進している。個人がブログを利用するのが当たり前になってきた現在、2007年は企業がターゲットになっていたのは間違いないところ。この企業におけるCMS化への道は、2008年も加速していくことは間違いない。

ブログバブルは崩壊したのか――2008年のブログ界

 このように2008年のブログ界は、飽和状態に脹れ上がったものを包み込めずにほころびが見えはじめたような印象を受ける。正に、バブル崩壊の予兆とも言えるかもしれない。

 しかし、一般のブロガーにとっての2007年はどうだったのかといえば、「何も変わらない」というのが実感ではないだろうか。普通にブログを更新し、コメントやトラックバック、ブログアクセサリーなどを利用して、ほかのブロガーと交流していく。昨年までと何ら変わらない日常である。

 しかし、これまで振り返ってきたように、ブログ界全体を見回せば、静かな亀裂が入りはじめた年でもある。

 これは、2006年のブログ界でもまとめた結論とまったく同じなのだ(関連記事)。迷走し、亀裂を生じさせているのはサービス事業者の都合でしかない。

 相違点があるとすれば、いわゆる「ブログ限界論」を一部のブロガーが唱えたことだろうか。しかしそれにしても、ほとんどの一般ブロガーとは関係のないところで起きている現象でしかない。

 そしてもう1つは、ブログという存在が大きくなるにしたがって、冒頭でも触れたように、リアルに関与し、ニュースソースとしても使われるようになるなど、メディアとしての一面も強めてきたことだ。

 このような状況を受けて、2008年のブログ界はどうなっていくのだろうか。

 昨年、2007年のブログ界が再生していくためには、Windows Vistaなどの環境整備がカギを握っていくのではないかと書いたが、残念ながらWindows Vistaが予想以上に普及していないことで、この予測は外れてしまった。そしてブログサービスのインフラも、実感として、あまり変わっていないような気がする。

 結果としてそれが、ブログバブル崩壊への亀裂を生じさせていったのだろうか。

 しかし、一般のブロガーたちにとって、2008年も2007年までと同じようにブログをツールの1つとして利用していくだろうことは間違いない。

 つまり、まだブログバブルは崩壊してはいないのだ。

 ただし、数多くのブロガーたちが、ブログサービスやブログツールをそのまま利用し続けるかどうかは未知数である。サービス事業者の動きによっては、どうなるか分からないが、インフラとしてとらえられる世の中の動向からは、課題が多いのが事実だろう。多くのブロガーにとっては、好きな時に自由にかける環境こそが必要ということだろうか。

 逆に、企業ベースで見ると、HTMLベースのWebサイトから、ブログツールなど、CMSベースのWebサイトへの移行がますます進んでいくことは間違いない。そういう意味では、ブログバブルがしばらく続くだろうことは想像に難くない。

 冒頭で提起した、ブログは今後、メディアとしてどのような方向に成長していけばよいのか? という問いであるが、その答えを握っているのは、ほかでもないブロガー個人にあると言えるだろう。ブロガーが普通に使っている分には、決して否定されるべき要素はないからだ。

 2008年のブログ動向に注視したい。

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